8月25日で2020年東京パラリンピック開幕まで、あと6年となる。五輪とともに招致が成功してから約1年たち、パラリンピックをめぐる環境は大きく変わってきた。選手強化を担う主体が厚生労働省から五輪選手と同じ文部科学省に移管され、これまで五輪競技の選手がほぼ独占的に使用してきたナショナルトレーニングセンター(NTC)はパラリンピック選手との共用となる方針が打ち出された。文科省のパラリンピック強化関連予算も、来年度は増える見通しだ。

パラリンピックでの日本のメダル獲得数はアテネ大会をピークに減少が続く。取材した2年前のロンドン大会でも歯止めがかからず「強化するには他国のように国の支援が不可欠。何とかお願いしたい」という選手の訴えは後を絶たなかった。世界最高峰の舞台で奮闘している彼らのひたむきさ、頑張りを目の当たりにしていることもあり、最近の変わり方には「願いが届いて良かった」とうれしく感じるとともに、クリアすべき課題も多く、おせっかいかもしれないがこれからが大変だとも思う。

東京パラリンピックが盛り上がり、成功するには日本選手の活躍は不可欠である。そして多額の国家予算が強化に当てられる以上、これまでにも増して結果が求められることになる。要はメダルが取れるか取れないかだ。パラリンピック出場経験者でつくる日本パラリンピアンズ協会の大日方邦子副会長は「選択と集中は当然必要。有望な競技に強化費を多く配分するのは当然」と話し、河合純一会長は「競技というより、有望選手を集中的に強化すればいい」とまで言い切っている。文科省は五輪同様にメダルの期待がかかる競技を重点強化する方針で、言い方は悪いかもしれないが、選手としては切り捨てられることなく6年後の舞台に立つためには今から勝負をかける必要がある。

与えられた環境を生かすことも重要な課題だ。巨額の費用をかけてNTCを拡充しても、現在は仕事をしながら競技に取り組む選手が多く、NTCを利用できなければ意味がない。練習中心の生活を送るためにもプロ化が活躍のための絶対条件になるだろう。幸いにも、日本オリンピック委員会(JOC)の就職支援制度「アスナビ」を障がい者スポーツ選手も利用できるように日本パラリンピック委員会(JPC)との協定がこのほど結ばれた。選手は企業に熱い思いを訴えてほしいし、企業側にはその声に真剣に耳を傾けてもらいたい。

国の支援が増え、結果の求められる競技スポーツとしての側面が強まる以上、報道を含めた世間の「見方」も変わらなければいけないと思う。パラリンピック期間中の新聞を開けばどうしても障害を乗り越えてきた苦労話が目を引く。極端な話をすれば「ハンデを背負いながら頑張ったのだから、勝ち負けはともかく褒めたたえる」というわけだ。だが、強化に国が本腰を入れ始めた今となっては、その施策が適正であるかチェックするためにも勝ち負けやその内容を報じる必要があるのではないか。厳しい視線を送り、時には辛辣な記事を書くこともあるかもしれないが、それは選手も望むところだと信じたい。「自分たちをアスリートとして見てほしい」。これも何人もの選手から発せられた切実な声だ。

これからも多くの選手に接し、技術の解説や勝負の分かれ目といったスポーツとしての側面は描く必要があると思う。その先に、読者の競技を見る目が変わっていればありがたい。「障がいがあるのに頑張って偉いね」ではなく、「(車いすテニスの)国枝のチェアワークは衰える気配が無いな」といった目の肥えた観客の会話であふれる東京パラリンピックを期待したい。

那須 歩(なす・あゆむ)1980年生まれ、新潟市出身。2005年に共同通信に入社。岐阜支局で警察、名古屋支社で司法などを担当し、12年3月から本社運動部でスキー、水泳、体操などを担当。