日本と欧米で価値観が異なることで、代表的なものは夏休みだろう。先日も驚く出来事があった。

6月にバレーボール男子のワールドリーグ越谷大会で日本と対戦したドイツチームの監督に今後のスケジュールを聞いた時だ。明るい笑顔で「3週間の休みを取る。選手たちには妻や子供たち、家族としっかりと休養を取ってもらう」との答えが返ってきた。欧州の中でも日本に似て勤勉というイメージが強いドイツだけに少し意外だった。

卓球の元女子日本代表でドイツ・リーグでのプレー経験もある梅村礼さんと先日、話をする機会があった。梅村さんはこの夏まで2年間、日本オリンピック委員会(JOC)の指導者海外研修でオーストリアにあるシュラガーアカデミーに滞在していた。今は夏休みで日本に一時帰国中で、今後もシュラガーアカデミーに拠点を置いてコーチ業に就くとのことだった。彼女も欧州の人たちのバケーションへの考えには最初は驚いたようで「スポーツ界の休みは一般の人よりも短いが、それでもチームのマネジャーは夏休みは一切、メールも返信しないし、携帯電話も出ない」と言う。ここまでのオンとオフの切り替えは、日本ではちょっと難しい。

休暇を突き詰めると、家族と仕事の関係に行き着く。欧米では家族を大切にし、仕事はその手段という価値観が定着しているが、日本の(男)社会では仕事が人生の大半を占め、家族が優先されるケースはまずないだろう。仕事場に家族が顔を見せることさえほとんどない。

その意味で、先のワールドカップ(W杯)ブラジル大会では印象的な場面があった。オランダ代表は大半の選手が現地に家族を同行させ、拠点となる練習場の芝生の片隅では子供たちがボール遊びをしている様子がテレビに映し出された。ピッチの上では厳しい顔つきで戦うオレンジ軍団も、試合がないオフは子供たちとリラックスした様子で過ごし、次の戦いに備える。ファンハール監督の采配だけでなく、選手に対する環境作りもオランダ4強入りの背景にはあったのではないかと感じさせられた。優勝したドイツも、決勝戦で試合が終わると選手がスタンドに行き、自分の恋人や家族を次々とピッチに招き入れ、喜びを分かち合った。

米大リーグのオールスター恒例の街頭パレードでも、レッドソックスの上原浩治投手が息子さんと一緒に車に同乗していた。同世代の同じ父親として素直に「かっこいいな」と思えたし、息子さんも父親を偉大な存在として実感したことだろう。

日本も家族や恋人がパートナーの晴れの舞台に遠慮なく同行してもいいのではないかと思う。日本では女性アスリートの方が元気だ。彼女たちの恋人の男性会社員がたっぷりと有給休暇を取って、応援に行き、試合後はともに泣き笑う。2020年東京五輪の喧騒の中に、そんな温かい景色が自然と映し出される社会になってくれればと思う。

吉谷 剛(よしたに・つよし)1975年、北海道出身。テレビ局勤務を経て2002年に共同通信へ。03年12月から07年まで大阪で阪神などを担当。同年12月から東京で、横浜や大リーグ野球担当の後、卓球やテニスを含めスポーツ全般を幅広く取材。ソチ冬季五輪・パラリンピックではソチ支局長を務めた