今月2日、日本人ドライバーの小林可夢偉が所属するF1チーム、ケータハムの売却が発表された。日本にも進出している格安航空会社大手のエアアジアを率いるトニー・フェルナンデスをチームオーナーとして、2010年から参戦した新興チームだったが、過去4年間の獲得ポイントはゼロ。5年目の今年も成績は振るわず、ついに売却と相成った。

無粋ながら、気になるのはその金額や条件といった売却の具体的な内容。今回は、スイスと中東を拠点とする投資グループが買収したこと以外、詳細は明らかにされていない。それでは、F1チームの売却はよくあることなのか? ドライバーやスタッフはどうなってしまうのか? 疑問に思う人もいると思う。

まずチームの売却だが、2000年以降に、チームの売却・買収は活発になった。自動車メーカーのF1参入が続いたからだ。ルノーがベネトンを、フォードが当時傘下だったジャガーブランドでスチュワートを、そしてホンダがB・A・Rをという具合に。買収金額も1億ドル(120億円前後=当時=)以上と巨額だった。

そして、300人前後だった各チームの規模は追加投資によりふくれた。倍以上の700人以上になったチームもあったほどだ。だが、2008年のリーマン・ショックで自動車メーカーは続々とF1を離れ、ホンダは何と「1ポンド」でチームを売却した。当時のレートでわずか160円だ。このタイミングでリストラされたスタッフの多くは、ケータハムを始めとする新興F1チームのほか、ドイツツーリングカー選手権(DTM)や世界耐久選手権(WEC)といった他のカテゴリーに職を求めた。

F1を頂点としたレース業界を英国では「レースインダストリー(レース産業)」と呼んでいる。エンジニアやメカニックなど専門職が多く、英国を中心に欧州や英語圏全体で小さいながらも、ひとつの産業としての規模を保っているからだ。それゆえ、“つぶしのきく"スタッフの再就職はさほど難しくない。ちょうど、家電業界の技術系スタッフがリーマン・ショック後にライバル会社や他業種の技術職へと転職したことを思い浮かべて頂ければいいだろう。

一方、ドライバーには厳しい現実がある。潤沢な予算やメーンスポンサーを持たないチームは、ドライバーに才能だけでなく多額の持参金を求めるからだ。可夢偉の才能はF1関係者の誰もが認める。それだけに、今後、どんな形であれ幸運の女神が微笑んでくれることを願うばかりだ。(モータージャーナリスト・田口浩次)