今シーズンのプロ野球を盛り上げているのは、広島東洋カープの快進撃だろう。本拠地マツダスタジアムだけでなく、敵地にも多くのカープファンが駆け付け、その熱気には驚かされるばかり。広島を応援するタレント「カープ芸人」や若い女性を中心とした「カープ女子」の言葉に表されるように注目が高まる中で、ファンの心をがっちりとつかんでいるのがドラフト1位新人の大瀬良大地投手(22)と、巨人から移籍した一岡竜司投手(23)の2人の右腕だ。

カープが最後にリーグ優勝を果たしたのは1991年。奇しくも、2人が生を受けた年だ。大瀬良が6月生まれ、一岡が1月生まれで、大瀬良の方が1学年下になる。大瀬良は先発の一角として5勝を挙げ、一岡は救援で19試合に登板して防御率0・00(ともに5月25日現在)で、すでにチームに欠かせない存在となっている。一岡は抑えのミコライオが不在の中、25日の西武戦(マツダ)ではプロ初セーブもマーク。「巨人では2軍で抑えをやっていたから、ずっとこの日を夢見ていた。プロ初勝利よりもうれしい」と初々しく喜びを語った。

期待以上の活躍を続ける2人だが、入団までの経緯はまるで違う。アマチュア球界ナンバーワンの呼び声が高かった大瀬良は、ドラフト会議で3球団の競合の末に担当の田村恵スカウトがくじを引き当てた。テレビ中継された記者会見では「大した投手でない時から(田村さんは)熱心に見てくれた方で、すごくうれしい」と満面の笑みを見せ、「炎のストッパー」と呼ばれた故津田恒実氏がつけた「14」の背番号を受け継いだ。

一方、一岡は巨人にフリーエージェントで移籍した大竹寛投手(31)の人的補償での加入だ。球団事務所で移籍を告げられた瞬間を「何が何だか分からなかった」と振り返る。専門学校に通い、アルバイトをしながら野球を続けた自分を見いだしてくれた巨人には恩義を感じていた。そんな球団から放出されてつらい思いをしたが、「カープに選んでいただいたという前向きな気持ちに変わった。クリスマスイブに(移籍を)言われたので、何年後かにいいプレゼントだったと思いたい」と、借りたばかりの自宅を引き払って広島へ。空いていた背番号「30」をあてがわれた。

今季の球場では「14」と「30」の背番号のユニホームを身にまとったファンが、日に日に増えている。営業担当者によると、新人では異例の種類の商品が揃えられた大瀬良は、チームトップクラスの売り上げを記録。一岡も実績を重ねるごとに売り上げが増加し、商品の拡充が検討されているという。一岡は「球場で『イッチー』と声を掛けてもらえるのでうれしいです。グッズの売り上げが増えているとも聞きましたけど、普段はグラウンドにいるから実感はないですね」と照れ笑いを浮かべた。

チーム全体に目を向ければ、堂林翔太内野手や今村猛投手、新人で先発ローテーションに入っている九里亜蓮投手らも1991年世代にあたる。彼ら"若鯉"の活躍なくして、23年ぶりの優勝は成し得ない。大瀬良は「東京六大学や東都のチームを倒したくて、九州共立大に進学した。プロでもそう。広島で関東や関西のチームを倒したい」と言う。優勝の味を忘れかけたカープファンに歓喜をもたらせられるか。秋の優勝戦線が今から楽しみだ。

竹内元(たけうち・はじめ)1987年生まれ、東京都出身。全国紙に勤務した後、2012年に共同通信入社。大阪運動部でのプロ野球担当を経て、13年末から広島支局で主にカープを担当。