「シルバーアロー(銀の矢)」と聞いて、ピンとくる方はかなりのモータースポーツ好きか、メルセデス好きの人だろう。

F1に限らず、数々のモータースポーツにワークスとして参加してきたメルセデス。そのマシンカラーは常に銀色だった。そしてその起源は1934年のグランプリレースに出場したメルセデスのW25というマシンにさかのぼる。

メルセデスは、レース前日の車検で当時決められていた最大重量(現代のような最低重量ではない)の750キロを1キロオーバー。そのまま出場すると失格となってしまうため、当時のチーム監督はレース前車検までに白く塗られた塗装を全部はぎ取ることを指示した。

そして徹夜作業で塗装がはぎ取られたアルミ地肌むき出しのマシンW25は見事1キロ“減量"に成功。レースでもコースレコードを更新して優勝し、ここからメルセデスの「シルバーアロー伝説」が始まったのである。

そして現在、F1では再びシルバーアロー伝説が生まれようとしている。

開幕戦からメルセデス・AMGは5連勝。ニコ・ロズベルグが1勝、ルイス・ハミルトンが4勝を挙げた。しかも、エンジントラブルでハミルトンがリタイアした開幕戦以外、すべてワンツーフィニッシュという完全優勝である。

レース後の記者会見でも、ロズベルクとハミルトンは毎回「シルバーアローにとって素晴らしい結果を出せた」と発言していて、この名称がいかに名誉なものであり、その名称にふさわしい結果を出せていることを喜んでいる。

今シーズン、メルセデスの強さは圧倒的だ。1988年にマクラーレン・ホンダはアラン・プロストとアイルトン・セナという二人の天才ドライバーで、シーズン16戦15勝という記録を残した。

これに続く強さを見せたのは2002年のフェラーリで、ミハエル・シューマッハーとルーベンス・バリチェロのコンビで17戦して15勝を挙げている。

正直、現時点でシーズン全勝を予想することは難しいが、リタイア以外すべてワンツーフィニッシュという強さや、冬のテストなどもあり全チームにとって走行データが豊富で、相対的な強さを検証する注目レースとして知られているスペインGPでの勝利は、シルバーアローの2台がマクラーレン・ホンダの記録を打ち破る挑戦権を得たと言ってもいいだろう。(モータージャーナリスト・田口浩次)