今シーズンの開幕直前からよく耳にするようになったセレッソサポーターの女子を指す「セレ女」という言葉。才能豊かで容姿に優れた選手たちが、すばらしいサッカーを展開する。そういう触れ込みがあれば、若い女性ならずとも、生で試合を観戦したいと思うのは当たり前だろう。しかも、若いスターに加えて、前回ワールドカップ(W杯)のMVPディエゴ・フォルランがいる。

今シーズンのセレッソ大阪が行くところ、スタジアムは常に満員だ。5月17日に埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ戦。チケットは完売だったという。多くは「浦和愛」にあふれるレッズ・サポーターであることは間違いないのだが、レッズ・サポーターのなかにもセレッソの選手たちのプレーが見てみたいという人は数多くいたはずだ。

しかし、期待が大きい分、裏切られた時の喪失感は大きい。もし自分がサッカーそのものにはあまり興味がなく、選手がお目当ての観戦者だったら、この日の浦和戦を見て、もう一度セレッソの試合に行こうとは思わないだろう。あれだけの攻撃のタレントをそろえながら、前半のシュート数はなんと0本。「サッカーってつまらないね」と思ったセレ女がいても不思議ではない。

Jリーグにはよくあることだが、せっかくいい感じに成長してきたチームが、監督が代わったことで前年より急激に調子を落としてしまうことがよくある。現在のセレッソがそれだ。伸び盛りの選手を多数擁して昨年は4位。そこにフォルランが加わった今シーズンは、誰が考えても優勝争いに絡んでくると思われていた。しかし、第14節を終了して順位は13位。確かに観客動員数は飛躍的に伸びているようだが、クラブ側が当初思い描いていたのとは大きくずれている感じだ。

普段、練習を見ているわけではないので、はっきりしたことはいえない。ただ選手たちのなかにも戸惑いがあるのではないだろうか。ここ10試合での成績は2勝4分け4敗。結果が出ないから、守備はまず失点しないことを考える。3―4―3のサイドアタッカーは守備を重視するあまり3バックに吸収され、5バックの形になってしまう。

そのなかでボールを奪っても、中盤でボールを預ける選手の数が足りない。また深い位置でボールを奪っても、前線までボールを運ぶ距離が長い。必然的に途中でボールを失う可能性も高くなり、奪われればまたゴール前に押し込まれる。まさに悪循環だ。

この試合のフォルランなどは、センターサークル付近で散歩状態。柿谷曜一朗にしても浦和DFから狙い撃ちされて、長い距離を相手ゴール前まで持ち込むのは至難の業といっていい状況だった。

「アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)との並行による過密日程は言い訳にしない」。ポポヴィッチ監督はそう話していたが、続けて「ACLを戦ったチームが一番暑い2時の試合はおかしい」と日程について不満を語っていた。監督からこういう言葉が出てくるときは、チームとしては非常に悪い方向に進んでいることが多い。

ただセレッソにとって幸運なのは、W杯のために2カ月間の中断期間があることだ。立て直す準備期間は十分にある。その期間を有効に使えるかどうかは、ポポヴィッチ監督の手腕にかかっているだろう。

一方で心配なのは、柿谷だ。試合内容を見ていれば仕方のないこととも思えるが、この日もシュート1本に終わった。これまでにないプレッシャーにさらされているのではないだろうか。ストライカーは内容はともあれ、得点という結果だけで評価される職業だ。それが13試合でわずか1ゴール。日本代表の看板を背負ったことが、必要以上に重荷となり、彼自身の持ち味である自由な発想による楽しいプレーが見られない。

「本当に申し訳ない。結果もそうですけど、いいとこなしに終わってしまった。皆さんの期待に応えることなく(リーグ)前半が終わった」

日に日に追い込まれたような形になっている柿谷の発言と表情は、聞いているこちらまで心が痛んでくる。

W杯を控えたこの時期、もちろん誰もが柿谷には大きな期待を抱いている。ただ、柿谷に知ってほしいのは、誰一人柿谷を責めてはいないということだ。

技術的な問題が発生しているのなら難しいのだろうが、この日の前半42分に見せた芸術的なトラップなど、技術の高さにはほれぼれとさせられる。幸い日本代表には香川真司、清武弘嗣、大久保嘉人とセレッソで同じ釜の飯を食った選手が多い。まずは気持ちと体のリフレッシュ。環境が変われば再びあの鋭い感覚を取り戻すのではないだろうか。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている