花見の季節が終わった関西地方の季節の移ろいに合わせたのではないだろうが、スペイン語で桜を意味するセレッソ大阪がこのところ元気がない。4月19日のJ1第8節、FC東京戦までリーグ戦では4試合、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)も含めれば6試合連続で勝利がない。

下部組織出身の若手が著しい成長を見せ、昨シーズンは4位に躍進。さらに今シーズン開幕前に2010年ワールドカップ(W杯)のMVPディエゴ・フォルランを加え、Jリーグの目玉として大きな注目を集めていた。

しかし、サッカーは難しい。フォルランという大きなプラス要素を加えても、簡単にその数字分の上積みが保証されているわけではない。チーム作りというのは、算数ではなく化学に近いのではないだろうか。少なくとも現在のセレッソは、いい結果をもたらす化学変化が起きていないように見える。

FC東京に0―2の敗戦後、ランコ・ポポヴィッチ監督は、「疲労によるという言い訳は通じないが、疲労が影響している」と語った。それは疑いのないことだろう。

わずか3日前の16日に行われたACL。ホームでの開催とはいえ浦項スティーラーズとの試合は、かなりタフな戦いだった。前半41分に南野拓実が一発退場となり、試合時間の半分以上を10人で戦わざるを得なかった。相手が日本にはまれなフィジカル・レベルの韓国チームであることを考えれば、体力的な消耗はかなりのものだっただろう。それでも勝てばまだ精神的には良好な状態を保ったのだろうが、結果は0―2の敗戦。内容でも圧倒された試合は、心身ともにかなりのダメージを残したのではないだろうか。

JリーグとACLを並行して戦う。このことの難しさは、以前から語られているが、実際に日程をこなすのは想像以上に過酷なのだろう。もちろん選手たちは二つのタイトルを狙っているのだろうが、下手をするとJリーグ、ACLともに中途半端になる可能性がある。日本からACLに出場している4チームが「二兎を追うものは、一兎をも得ず」にならないことを願っている。

FC東京戦に話を戻すと、現在のセレッソはボールを持っている選手に対してのサポートが足りないように見える。動きだしが一歩遅れているから、パスコースに対して顔を出せない。パスの出しどころがない選手が無意味にボールを下げてしまうという場面が目立った。

疲労は集中力の低下を招くものだが、あのフォルランですら単純なトラップミスをしていた。そんな光景は、W杯ではお目にかかったことはない。一つの勝利で悪循環は劇的に改善する可能性はあるが、セレッソの選手たちは一度心身ともにリセットする必要があるだろう。

なかでも焦りが見えるのが昨シーズン21ゴールを挙げ、一躍ザッック・ジャパンの切り札として注目されるようになった柿谷曜一朗だ。ACLでは3点を挙げているが、J1で8試合を戦って無得点。W杯まで2カ月を切った時点でのこの結果は、本人だけでなく周囲も心配になってくる状態だ。

2月25日のアウェーの浦項戦で山口螢のロングパスを受けての先制点。いわゆる持ち味のDFラインの裏に抜け出す動きが、このところあまり見られない。フォルランとのポジションの兼ね合いが関係することもあるが、窮屈そうにプレーしている印象だ。FC東京戦では前半40分、後半11分と2本のシュートを放ったが、1本目はGK権田修一の正面、2本目のヘディングシュートはバーの上。運にも見放されている。

かつてのカズ(三浦知良)がそうだったが、本調子でないときのストライカーは、パスが出てこないと中盤に戻ってボールを触りたがる。FC東京戦の後半の柿谷にも、そういう場面が目立った。調子のいいときのストライカーは、ワンチャンスを生かすために前線で我慢ができるものだが、いまの柿谷にはそれがない。

本人の焦りは試合後の取材時にも感じられた。無得点について問われると、「それ(得点の仕方)が分かったらね。教えてくれるなら聞きたい。でも気にしてもこの6試合は返ってこない」と自分自身に対するイラつきが伝わってきた。

W杯という大舞台を直前に、柿谷はこれまでにない期待にさらされている。それが感じたことのない巨大なプレッシャーになっていることは間違いないだろう。ただ現在のセレッソの低迷は、柿谷個人だけの問題ではなくチームの問題だ。何かのきっかけがあれば出口は見える。柿谷の場合、それはゴールだろう。

考え方によっては、あまり悲観することではないかもしれない。選手のピークは何カ月も続かない。柿谷は現在、底の状態。それを考えれば、W杯に向けて調子は上向いてくるはずだ。セレッソのサポーターには申し訳ないが、ここはブラジルで活躍する柿谷を見るために少しの間、我慢してもらいたい。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている

(注)得点などは4月19日時点