プロ野球が3月28日に開幕した。昨年日本一の楽天が西武に開幕3連勝すれば、セ・リーグの覇者、巨人は阪神相手に2勝1敗と勝ち越し、両チームとも上々のスタートを切った。

特に楽天は絶対的なエースだった田中将大(ヤンキース)がいなくなっただけに注目された。開幕3試合とはいえ、そんな大きな穴を感じさせない戦いぶりで、とりあえずファンをひと安心させた。

星野監督は選手たちを叱咤激励したに違いない。「田中がいなくなって勝てないと言われたくないだろう」と。67歳のベテラン監督の人心掌握術が、年々磨かれているように思える。

▽「お前がエースだ」

開幕投手の則本昴大が2―1の接戦に完投勝利を収めたが、2戦目の塩見貴洋は八回で、3戦目の辛島航は六回途中で交代させている。

則本は緊張を強いられる開幕戦では相当な負担となっただろう133球を投げたが、監督に途中で代える考えはなかったようだ。「お前が田中の後のエースだ」というわけだ。

則本は昨年、15勝を挙げ新人王になった。巨人との日本シリーズでは田中とともに投の2枚看板としての重責を担い活躍したのは記憶に新しい。

3年目の左腕、塩見は9勝、6勝の後の昨年は左肩故障で1軍登板はなし。29日の試合では、3点差がありながら90球で交代させ2年ぶりの白星をつかませた。

逆に立ち上がりから安定感に欠けていた6年目左腕の辛島は六回に本塁打で3―1と詰め寄られかけると躊躇なく交代を告げている。

球数や試合展開、選手の性格などを考える柔軟な投手起用を見せた。余裕を持ったときの星野監督は選手を本当にうまく乗せるのである。

そんな楽天3連勝にヤンキースの田中は「イーグルス開幕3連勝。則本ナイスピッチング」とツイッターを通じて喜んだ。

▽野球の素晴らしさと喜び

星野監督は2度の中日監督時代は選手に隙を見せず「監督とは怖い存在」を前面に押し出していた。

というのも、星野監督が尊敬してやまない元巨人監督の川上哲治氏(故人)は「管理野球」で9年連続日本一という偉業を達成した名監督で、選手とは一線を引く監督として恐れられた存在だったからだ。

しかし、阪神監督時代には硬軟自在というか、選手の心を理解して力を引き出すことで、18年ぶりのリーグ制覇を成し遂げている。

喜怒哀楽ぶりは変わらないものの、楽天ではさらに選手の懐に飛び込んでいるように思う。年齢から来るものもあろうが、私は2011年の東日本大震災を経験したことで“人生観"が変わったのではないかと思っている。

「野球ができる素晴らしさと喜び」を東北の人と分かち合いたい、と。最近は多少とも、涙もろくなったとも聞いている。

開幕したばかりで、褒めすぎのきらいもなくはない。ただ、楽天は昨年の優勝で選手が自信をつけたことと、マギーが抜けた穴を大リーグ通算150本塁打のユーキリスで埋めた。

昨年は数字以上にジョーンズとマギーの存在が大きかった。この打線の軸を重視する方針を貫き、ヤンキースなどでプレーした現役大リーガーだったユーキリスを獲得したのである。

こうした球団フロントの戦力面の補強もできたと思う。これにドラフト1位で取った高校ナンバーワン左腕の松井裕樹(桐光学園)が先発陣に定着すれば大きい。まあ、無理はさせないだろうけど。

▽来るのか「パの時代」

楽天とともに開幕3連勝のソフトバンクの戦力補強も強力だった。オリックスからの李大浩は4番を任されそうだ。

秋山幸二監督が重視する捕手には日本ハムから鶴岡慎也。先発陣にスタンリッジ(阪神)ウルフ(日本ハム)中田賢一(中日)を加えた。

日本ハムの前評判はそれほどでもないが、2年目の大谷翔平が3番に座り、中田翔がタイトル争いに加わるようだと面白く、開幕戦はオリックスに2勝1敗だった。

仙台、福岡、札幌の「地域密着型」の3チームが争えばパはさらに盛り上がる。

西武が日本シリーズに出場したのは2008年、ロッテは2010年、オリックスは1996年が最後だった。6球団での混戦が実現するようだと、自然にファンの目もパに向くことになる。

ごく一部だが、「これからはパの時代」と指摘する向きがある。これまで人気面で後塵を拝してきたパは、メジャーのリーグ統合型ビジネスをモデルに、6球団が一緒になった事業を展開している。

2007年に「パシッフィック・リーグマーケティング(PLM)」という株式会社を立ち上げ、今では携帯電話向けウェブサイトやインターネット動画配信、さらにチケットの共同販売などを行っている。

「プロ野球は運命共同体である」との意識で、これまでの各球団単独ではなく新しい「プロ野球ビジネス」を作り出そうと必死なのである。

セが昨年同様に「1強5弱」となり、巨人が独走するようだと、これはピンチである。中でも阪神、中日、広島が弱いと、途端に観客動員に影響するからである。

クライマックスシリーズ(CS)が頼みの綱になるようでは、あまりにも心もとないと思っている。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆