世界中のサッカーファンが熱狂するワールドカップ(W杯)ブラジル大会まで、あと3カ月を切った。一方、「クラブ世界一」を決めるトヨタ・クラブワールドカップは昨年12月に初めてモロッコで開催され、スター軍団のバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)が優勝、開催国枠で出場したラジャ・カサブランカ(モロッコ)が決勝に進む快進撃を見せた。記録の上では1試合平均約3万5千人の観衆を集めたが、参加クラブの国以外では注目を集められない実態を痛感した。

クラブW杯は2005~08年と11~12年は日本で、09~10年はアラブ首長国連邦で開催された。毎年12月恒例の「クラブ世界一決定戦」が欧州であまり認知されていない現状について、国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長は「これまでは時差や地理的な問題があったので理解できる。だが欧州への入り口とも言える(アフリカ最北端の)モロッコで開催されているのに、注目されないのはがっかりしている」と率直な思いを語った。

今季からグアルディオラ監督が指揮し、ロッベンやリベリら世界屈指の名手がそろうBミュンヘンを追って多くのドイツメディアが訪れた。だが、大会中に欧州チャンピオンズリーグの決勝トーナメントの組み合わせが抽選で決まると、記者会見では「対戦するアーセナル(イングランド)についてどう思うか?」と、クラブW杯と関係のない質問に終始した。世界最強の呼び声が高いBミュンヘンの参加は、皮肉にも今大会が盛り上がりを欠いた一因にもなった。他の6チームとの実力差はあまりにも大きく、準決勝でアジア王者の広州恒大(中国)を、決勝では地元のラジャ・カサブランカを下して優勝した。当然ともいえる結果に、あるベテラン英国人記者は「中国とモロッコのチームに勝って世界一とは…。欧州で誰も興味を示さないのも仕方がない」と指摘した。

運営面では良くも悪くもモロッコ人のおおらかさが目立った。大会の公式プログラムは開幕してから3日後にようやく完成し、報道陣用のメディアバスは予定通りに運行することの方が珍しかった。ある日は運転手が「ガソリン代が未払いだから走れない」とボイコットする始末。代わりに現地組織委員会のメンバーが自家用車で会場まで乗せてくれたが「FIFAの人間は神経質だけど、こんなのは大した問題じゃないさ」と、他人事のようだった。ダフ屋の存在については、組織委幹部でさえ「ダフ屋はモロッコだけの問題ではなく、世界中どこにでもある。逆にダフ屋がいるということは、それだけ大会が盛り上がっているということだ」と開き直ったような発言をした。

冒頭に1試合平均約3万5千人と書いたが、これはあくまでも観客数の計算方法が過去の大会と違ったため。従来はダブルヘッダーの日でも第1、2試合でそれぞれ実数発表していたが、今回は2試合とも第2試合の観客数で統一された。空席だらけだった広州恒大―アルアハリ(エジプト)をはじめ、5位決定戦や3位決定戦でも公式記録上3万人を超えたのは、いずれも第2試合にモロッコ最大の人気クラブのラジャ・カサブランカが登場したからだった。

クラブW杯は前身のトヨタ・カップが25年にわたって東京・国立競技場などで開催され、日本とのつながりは深い。今回も大手広告代理店のスタッフと、テレビ局の中継クルーが数十人ずつ大挙動員された。だが、日本の記者は筆者と某全国紙のリオデジャネイロ支局員の2人だけと、FIFAの公式大会では異例の少なさだった。現行方式となって10回目の節目を迎える今年もモロッコで開催されるが、年末の風物詩として世界中に定着するのは簡単ではなさそうだ。

田丸 英生(たまる・ひでお)1979年生まれ、東京都出身。共同通信名古屋、大阪運動部を経て、09年12月から本社運動部。担当はサッカー、ボクシング、相撲。