シーズンの開幕前から、苦戦は予想されていた。今後も同じような展開は続くだろうが、それをどこまで耐えることができるのか。技術的問題以前に、精神的な持久力が鍵を握ることになるだろう。

四国初のJ1チーム、徳島ヴォルティスが苦戦している。3試合を終えて3連敗。失点10に対し、いまだ得点は0。勝ち点を得られないという以上に、270分を戦って1点も取れていないということの方が、心に重くのし掛かっているのではないだろうか。

頭では分かっていても、心のどこかに巣くう引っ掛かりが、知らず知らずのうちに増大して、それがチームにまん延。結果的に集団としてのパフォーマンスが落ちる。サッカーでは、そのようなことをよく目にすることがある。その最たる例が、十分な戦力を擁しているにもかかわらずJ2に降格した3シーズン前のFC東京、2シーズン前のガンバ大阪だろう。

今回の徳島は、この2チームに比べても戦力が必ずしも整っているとはいえない。初めてのJ1で互角の殴り合いをすれば、劣勢は目に見えている。現実的な目標としてはJ1残留。そのなかでどのような戦いぶりをするかを注目していた。

3試合すべてを見たわけではないので、断言はできない。ただ、第3節の横浜F・マリノス戦を見る限り、かなり厳しいなというのが正直な思いだった。前線からの厳しいプレスに定評のある横浜FMが相手だというのも関係したと思うが、特に前半はボールを持っても前を向くことさえできなかった。

いくらボールを持たれても、守っている側からすれば前を向かない相手はまったく怖くない。繰り返される無意味なバックパスの中で、徳島の選手たちは想像以上になにもできないと感じてしまったのではないだろうか。

このことに関しては小林伸二監督も「個人の技量の差が出た。プレッシャーにめげずに(ボールを)縦に入れることが必要」と認めていた。しかし、改善するには戦術面も含めた大きな意識改革が必要だろう。

言葉のさじ加減というのは難しい。「ボールを大事にする」という指示は、選手の受け取り方によっては消極性につながることがある。ボールを持つということは、基本的には相手のゴールを狙うというのと同意義であるはずだ。だが、取り方によっては本質から外れ、ボールを失わないことそのものが目的になることがある。それがこの試合の前半の徳島だったのではないだろうか。

技術や戦術は、もちろん大事だ。それにもまして、ゴールを奪うのに一番大事なのは「取ってやろう」という気概だろう。その意味で日本人選手以上に、外国籍の選手のほうがゴールに対する意識は高い。終盤に入り徳島は高崎寛之に代わりドウグラスを投入。サイドバックのアレックスがFWのように前線に張り付き、クレイトン・ドミンゲスも含めたブラジル人3人が攻めの姿勢を見せた。それが多少強引ではあったとしても、攻めの姿勢は見る者にも伝わってきた。ただ前後半合わせてシュート4本では試合には勝てないのも現実だ。

過去2年、J2から昇格したチームは、見せ場もなく早々とJ1残留争いから脱落した。2013年の大分トリニータ、2012年のコンサドーレ札幌ともに、挙げた勝ち点はわずかに14。獲得可能な最大勝ち点が102ということを考えれば、いかにも少ない。なんの見せ場もなくJ2に逆戻りしたチームを、サポーターはどのように見つめていたのだろう。

確かに置かれた状況はそれぞれ。クラブの財政事情など、難しい問題は山積しているだろう。そのなかで見栄えは悪くても、徳島にもなんとかJ1にしがみつく方法を探ってほしい。初めから伝統は作れない。まずJ1にとどまることでクラブの歴史は作られていく。その意味で理想のサッカーから現実路線に切り替えて勝ち点に固執した、昨シーズン終盤のヴァンフォーレ甲府は、お手本になるのではないだろうか。

一方、ACLの広州恒大戦から中2日。横浜FMが本調子かといったら、必ずしもそうではなかったように思える。それでも終わってみれば、3―0の快勝。徳島と対極を成す3戦全勝。しかも無失点というのは、これ以上ないスタートだ。

中村俊輔は「下がっている相手にはセットプレーが大事」といっていたが、その言葉通り自らのFKから2得点を演出。精度の高いキックという飛び道具の有効さを、あらためて証明した。

難しい試合を、ますます難しくしていくチームと、一発のリスタートで結果を簡単に得てしまうチーム。チームの地力の差といってしまえばそれまでなのだが、徳島というフレッシュなチームに新しい発見を期待しているファンは多いと思う。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている