3月16日、F1の2014年シーズン開幕戦オーストラリアGP決勝レースが行われた。今年はレギュレーションと呼ばれるルールが大幅に変更されたとあって、週末を通じて多くの驚きがある開幕戦であった。

まず、最初の驚きは全車スタート時の音の大きさ。これまで体の内側が震えるような爆音を轟かせていたエンジン音は、耳栓を必要としないほどにおとなしくなった。

正直、これまでのF1ファンは誰もが戸惑うほどで、マシンを空撮するために飛んでいたヘリコプターの方がうるさいと感じたほどだ。

次に、リヤブレーキトラブルでスタート直後にクラッシュリタイアしたケータハムの小林可夢偉、マシントラブルから3周でリタイアしたレッドブルのセバスチャン・フェテルと、次々にマシンがリタイアした結果、完走は22台中14台。マシントラブルによるリタイアが本当に少なくなった最近のF1が失っていた、突然トラブルが発生する、以前の開幕戦らしいドキドキ感が戻って来た。

さらにもう一つ、エンジンへの「瞬間最大燃料流入量違反」でレース後に初の母国2位表彰台を取り消されたレッドブルのダニエル・リカルドに対するチームの反発と、各国メディアのセンセーショナルな報道は、今年公開されたF1映画「RUSH」に出てきた、主演ジェームス・ハントのマクラーレン車両の規定違反で争うシーンを彷彿とさせる。今後、裁判を通じてどのような決着を見るのか注視していきたい。

さて、そんななか、まぶしいほどの輝きを見せていたのはメルセデスのニコ・ロズベルグだろう。彼がドライブしたメルセデスのマシンは1998年のマクラーレン、2009年のブラウンを思い出させるほどに圧倒的な力の差を見せつけて優勝した。

実は決勝レース前のドライバーズパレードで、パドックからコースへと各ドライバーが向かうなか、ロズベルグがパドック内に流れていた音楽に合わせてダンスしながら歩いていくのを目の前で目撃した。

表彰台でも観客に向かって声援をあおるミュージシャンのようにノリノリだった。筆者が見てきた過去の記憶では、こうしたテンションのドライバーは、圧倒的な強いマシンを手にして自信を持っているときの特徴だ。つまり、テストでの時はまだ確信を持てなかったチャンピオンシップへの挑戦権を、ついにこの手にしたのだと、ロズベルグは開幕戦で実感したに違いない。(モータージャーナリスト・田口浩次)