2週連続の週末の雪。首都圏を含め、各地で大混乱となった。北国生まれにとっては、それほど驚く光景でもないのだが、外に出るとなると考えてしまう。Jリーグ各クラブのファンフェスタなども中止になったようだ。

欧州のシーズンに合わせたJリーグの秋春制への移行。観客は来るのか。それ以前に雪国のチーム練習場の確保。さらにスタジアムの施設面での問題。机上で考えているだけでは気づかない難問が、雪道を歩いているだけで思いついたのではないだろうか。

技術的には雪が降っても、札幌ドームのように試合ができるスタジアムを作ることは可能だ。しかし、それが雪の降る地域のすべてとなると、お金がいくらあっても足りない。これに練習場も加わるのだ。W杯会場のすべてに空調をつけるといっているカタールほど、日本は経済的に豊かではない。

秋春制の理想は、決して悪いものではない。ただ、現在の日本の科学力では、気候や天候は変えられない。

連日、ソチで行われている冬季五輪で涙腺を緩めている。日本人選手のメダル獲得は、当然だがうれしい。ただ、この舞台に立つまでにすべての選手がどれだけの努力を積み重ねてきたのだろうと想像するだけで、メダルの有無にかかわらず、彼らは自分自身に対しての勝者なのだと思う。「己に勝つ」というのが、実は一番困難なことなのかもしれない。

冬季五輪を見て、やはりベテランの存在は大きいと感じた。スキー競技ジャンプ団体、41歳の葛西紀明選手をリーダーに、銅メダルを獲得したチームのことだ。

以前、フランス代表を1998年のW杯優勝に導いたエメ・ジャケ監督をインタビューしたときに、こう話していた。

「チームには精神的リーダーと、技術的リーダーの2人が必要だ」

葛西選手は一人で、両方の役目を果たしているわけだが、Jリーグにもこの手の選手はいる。横浜F・マリノスの中村俊輔(35)、中澤佑二(35)、川崎フロンターレの中村憲剛(33)、鹿島アントラーズの小笠原満男(34)、ガンバ大阪の遠藤保仁(34)らだ。

Jリーグでは一時、これからベテランの域に達する30歳前後の選手を「何で」というぐらい解雇する時期があった。年俸が高くなっていく中堅選手よりも、安い報酬で契約できる複数の若手選手の伸びしろに懸けるという傾向があった。しかし、多くの場合、若手選手は戦力にはならなかった。逆に中堅の抜けた穴を埋めることができずに低迷するチームがあったことも事実だ。

その意味で、現在のJリーグがベテラン選手を大切にしていることは、とてもよいと思う。彼らを年齢や年俸の額で見るのではなく、プレーやチームに与える影響力で評価しているからだ。

経験というものは、何事にも代えがたい財産だ。若手が真実をつかむとき、自ら試行錯誤を繰り返してそれを獲得していくのと、ベテランからヒントを与えられるのでは、かかる時間がまったく違う。年によって成績の浮き沈みはあるものの、ベテランから若手への受け渡しが一番うまく受け渡しされているのが、アントラーズなのではないだろうか。このクラブの哲学は一貫性がある。

これはサッカーに限らないのだろうが、一つのことを追求していると、いままで見えなかったものが、見えてくることがある。くしくもサッカーに関して中村俊輔と中村憲剛が同じことをいっていた。

「この頃、サッカーが以前より分かるようになってきた」

彼らのような試合の流れの「見える」選手が増えることで、Jリーグも観衆をうならせるいぶし銀のプレーが数多く見られるようになるのではないだろうか。

近年、サッカー界では35歳ぐらいでも、一線級で活躍する選手が増えてきた。これはJリーグに限らず世界的な傾向だ。以前なら30歳前後で引退というのが普通だった。

トレーニング法やコンディショニングなど、様々な面で科学的になりアスリートの選手寿命が延びたのは間違いないだろう。ただサッカーに関していえば、これが一番大きいと思う。ファウルの基準が変わったことだ。

ワールドカップ・イヤーということもあり、過去の大会の映像を見直す機会が増えている。単純に思うのは、クライフやマラドーナは、よくこんな反則だらけのなかでプレーをしていたなということだ。近頃、とんと耳にしなくなったが、マーカーは平気で「削り」にいっている。相手にケガをさせようという悪質さだ。現在の判定基準だったら、退場者続出で、試合終了時に半分も選手は残っていないだろう。

その意味で現在は、ベテランでも技術を持つ者が、正当に技術を発揮できるルールの下でサッカーが行われている。若手を成功に導くため、リードしていくベテランの存在。その有無が、チーム成功のカギを握っているの

ではないだろうか。Jリーグがもうすぐ開幕する。楽しみだ。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている