ことしで7回目を迎えた野球のアジア・シリーズは、オーストラリアのキャンベラが初優勝を果たして幕を閉じた。決勝では14―4と台湾の統一を圧倒しての栄冠だった。過去6大会の優勝は日本勢が5度、韓国勢が1度と2カ国が独占したが、今回は球団創設9年目で初の日本一に輝いた楽天が準決勝で統一に1-4で敗れ、日本勢として初めて決勝に進めなかった。2年ぶりの頂点を狙った韓国のサムスンも準決勝でキャンベラに敗れた。29歳のコリンズ監督が報道陣に「優勝に驚いていますか」と笑って問い掛けたように、2011年から大会に参加するオーストラリアにとっては、価値ある優勝となったに違いない。

キャンベラは打撃力に優れる好チームだったが、頂点に立った理由はそれだけではないと考える。1次リーグでキャンベラを破った楽天はエースの田中や今季15勝の則本が登板せず、外国人選手も不参加。若手主体のメンバーで、激闘の日本シリーズを終えた疲労感がチームを支配していた。サムスンも状況は同様で、主力の一部を欠いた。南半球にあり、季節が逆のオーストラリアはこれからがシーズン本番。体調面でも有利だったこともプラスに働いた。大会の位置付けが定まらない中、日本や韓国はこれまで辛うじて意地を見せてきたが、情熱の低下がついに結果となって現れたのではないだろうか。

世界一決定戦の実現につながっていくことも期待され、2005年に始まったアジア・シリーズは、冠協賛社の撤退などから早くも08年を最後に休止。国際大会誘致に積極的な台湾が開催地に名乗りを挙げて11年に再開にこぎつけた。しかし、各国で優勝チームが決まり、盛り上がりが最高潮に達した後に開かれるため注目度は高くないのが実情。台湾プロ野球リーグの首席顧問を務める郭源治氏(元中日)も「日本や韓国のチームは疲れている」と理解を示すように、ベストメンバーを組めず、真のアジア王者を決める大会とはなっていない。これは国の立場が変わっているだけで、開催のたびに米国やドミニカ共和国など野球大国の“本気度"が疑問視されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と本質的に同じ問題をはらんでいる。

ことしの大会の舞台となった台湾は八百長問題で低落した野球人気が回復傾向にあり、大会に先だって行われた日本代表と台湾代表が対戦した強化試合での日本ハムの陽岱鋼の人気もすさまじかった。ぶらりとスタンドを一周すると、どこで手に入れたのだろうと不思議になるほど日本のチームのユニホームを着ている台湾人ファンの姿が数多くあった。韓国もプロ野球の観客動員は好調が続く。野球のより一層の国際的な発展を目指すなら、今アジアで燃えている野球の灯をさらに明るくすることも重要なはず。そのためにはこの大会の位置付けが変わっていくことが必要であり、日本にはその先頭を走ってもらいたいと思う。

天ばかりを見ていると、足元でつまずくこともある。現状では野球の国際化も真剣勝負での世界一決定戦も、道のりは相当遠い。だからこそ、それらを願う者として、また記者としても視線を大切にしていきたい。野球のスタイルからチアガール、応援の仕方まで。日本とはまた違ったアジアの野球にも魅力がたくさんあることを知ったのだから。

益吉数正(ますよし・かずまさ)1981年生まれ。宮崎県出身。2005年共同通信入社。千葉、甲府、福岡の支社局で警察などを担当後、11年から大阪運動部で高校野球を中心に取材。13年2月から本社運動部でプロ野球の遊軍担当。