世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級チャンピオン山中慎介(帝拳)は10日、両国国技館で5度目の防衛戦を行い、9回KO勝ちで4連続KO防衛に成功した。

挑戦者のアルベルト・ゲバラ(メキシコ)がアウトボクシングに徹したため、KOは難しいかとも思えたが、見事にフィニッシュに持ち込んだ。

「神の左」とまで形容される一打必倒の鋭さは出色。近い将来2階級制覇、米ラスベガス進出の可能性が大きく膨らむKO劇だった。その安定感はバンタム級の「最強王者」の表現がぴったりくる。

ゲバラは予想通り、やりにくい相手だった。後に世界2階級を制したレオ・サンタクルス(メキシコ)もKOできず、ガードの固さ、逃げ足の速さには定評があった。

山中は「必ずKOする」と意気込んでゴングを迎えたが、やはりゲバラは捕らえにくかった。逆にいきなりのカウンターを浴びるなど、序盤は挑戦者のペース。しかし、山中は中盤すぎから徐々に盛り返し、主導権を奪い返した。

ポイントは8回だ。山中がロープに追い込み、左ストレートで痛烈なダウンを奪った。ゲバラは完全に効いていたが、ビデオを何度見てもこの一打は正確にヒットしていない。顔面をかすめたようなパンチなのだ。ここが山中のすごいところだ。

それまでの打ち合いの中でゲバラは山中の強打を肌身にしみるように知り、その表情はどこかおびえたように見えた。世界戦という舞台で、挑戦者が気持ちで圧倒されている。王者の貫禄に押された格好のダウンといえるだろう。こういうダウンは、あまり見たことがない。

もう試合は終わったようなもの。続く9回、得意の左ストレートを決めてフィニッシュ。リング上でのガッツポーズはまぶしく見えた。

現在、バンタム級の世界王座には山中のほか、世界ボクシング協会(WBA)の亀田興毅(亀田)、世界ボクシング機構(WBO)の亀田和毅(亀田)と実に3人が就いている。誰が一番強いのか。試合内容、実績等を考えた場合、答えが山中であることに異論を挟む余地はないだろう。

世界のバンタム級史は「強打者の歴史」でもある。現代最強の山中がさらにステップアップするためにも、複数階級制覇や本場ラスベガスへの進出は越えなければならないハードルである。あの左がさらなる舞台で輝くことを期待したい。(津江章二)