運動部勤務となり、アマチュア野球を担当するようになって10カ月足らず。野球は中学までかじっていた程度で、あらためて奥の深い競技だと思い知らされた。プレーだけでなく、ルールやマナーの面も含めてだ。

マナーや流儀は日本と米国、アマとプロといったように、プレーする環境によって様々な違いがある。少し前の話だが7月の日米大学選手権第5戦で学生野球では珍しく、あわや乱闘かという場面があった。直接のきっかけとなったのは日本選手が死球を受けたことだが、その前に伏線があり、別の日本選手が本塁打を放ってガッツポーズをしたことなどで米国ベンチが「態度が良くない」と指摘していた。

派手なガッツポーズや雄たけびは対戦相手への敬意を欠くとされ、特に米国は日本に比べてタブー視する向きが強い。第5戦は勝った方が優勝という状況だった。貴重な本塁打を打ったことで、選手は喜びを抑えきれなかったのだろう。普段は日本の野球を見ている身にとってはそこまで派手なパフォーマンスに思えなかったが、米国選手からすれば不快だった。そう考えるともし楽天の田中将大投手が米大リーグに挑戦した場合、マウンドで1回転するようなガッツポーズは「ご法度」となるのだが…。あの気迫に満ちた姿を見られなくなると思うと、ちょっぴり寂しい。

プレー中に投手が笑顔を見せることにも、アマチュアに比べプロは厳しいようだ。先日のクライマックスシリーズで好投した巨人の菅野智之投手に対し、原辰徳監督が「にやけていた」と苦言を呈したという。昨年はソフトバンクの高卒ルーキー、武田翔太投手がマウンドでにこやかな表情を浮かべることにも賛否があった。高校野球では笑顔を見せる投手が多いが、それが問題になったという話はあまり聞かない。

相手を侮蔑するような意思を込めた笑顔やガッツポーズは慎んでしかるべきで、プレーする環境が変われば「水に慣れる」ことも大事なことだろう。一方で、選手の心の底からの喜びがガッツポーズや笑顔となって表れた場合、その姿が見ている側の胸を打つことがある。2003年の大リーグのポストシーズンで、普段は冷静な当時ヤンキースの松井秀喜選手がホームイン後に跳び上がって拳を握りしめた姿は「名シーン」として刻まれているはずだ。

楽天からドラフト1位指名された松井裕樹投手(桐光学園高)もマウンドで時折笑みをこぼす選手で「いいピッチングができていると自然に出てしまう」そうだ。プロに舞台を移し、どういう表情で投球するのか。密かに注目したい。

中嶋巧(なかじま・たくみ)1983年生まれ。仙台市出身。2007年7月共同通信入社。松江支局、大阪支社経済部を経て13年2月から運動部へ。アマチュア野球を中心に取材。