最終戦バレンシアGPまでもつれこんだ2013年の総合優勝は、大方の予想通りモトGPルーキーのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が獲得した。

この日、20歳266日のマルケスは、1983年にフレディ・スペンサーが達成した21歳258日を30年ぶりに更新した。最高峰クラスの参戦初年度で総合優勝するのは、78年のケニー・ロバーツ(当時27歳)以来となる。

マルケスは、今季序盤のレースから超一流選手たちと互角以上の戦いを繰り広げ、ポールポジション、初優勝など最年少記録を次々と塗り替えた。10月早々にも総合優勝を確定させそうな勢いだったが、自らの失策や他選手の粘りなどで決着が持ち越されていた。

11月10日にスペイン・バレンシア郊外のリカルド・サーキットで行われた決勝レースで、昨季総合優勝のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)やチームメートのダニ・ペドロサと三つどもえの戦いを展開した。

ロレンソが勝っても、4位以内ならば総合優勝が決まる状況だったマルケスは、3位でフィニッシュ。「自分を抑えてバトルに加わらないようにした」と振り返った。

「ダニとホルヘが激しくやり合っていて、自分もその中にまじってバトルをしたかったので3番手にじっと居続けるのは難しかった。でも、目の前の戦いよりも総合優勝の方が大切だと自分に言い聞かせ、レースを終えることができた。普通の状況なら、自分もバトルに加わって戦いを楽しんでいたと思う。正直なことを言えば、レース後半はもっと速く走ることもできた。けれども、今回のような状況では、自分が攻める姿勢を見せるとホルヘがさらに攻撃的になって、自分が致命的なミスを犯してしまう可能性もあった。それを考えると、この戦略が正解だったのだと思う」

このコメントにあるように、マシン同士が接触する激しい駆け引きでも嬉々としてその中に飛び込んでいく稚気は、マルケスの最大の武器の一つだ。彼の無邪気な大胆さは多くのファンを惹きつけるが、そのライディングスタイルが時には議論の的になることもあった。

モトGP参戦1年目だけに、成熟度という観点では未完成な面があるのは事実だろう。いずれにせよ、この若者がずば抜けた資質を備えていることに関しては、異論を挟む者はいない。

ホンダの先輩に当たる、ミック・ドゥーハンが破竹の5年連続総合優勝を開始したのは29歳の時だった。今のマルケスは、その年齢に達するまで、まだ9年もある。(モータージャーナリスト・西村章)