シーズン終盤の3連戦を迎えるまで、2013年の王者争いはマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が圧倒的有利にみえていた。二輪ロードレース世界最高峰の記録を次々と塗り替えてきた弱冠20歳のスーパールーキーは、ランキング2位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)や、3位のチームメート、ダニ・ペドロサとの差を着々と広げ、10月上旬の段階では史上最年少記録を塗り替える総合優勝は時間の問題に思えた。

しかし、状況は10月中旬からマレーシア、オーストラリア、日本と続いた3週連続開催のレースで変わってきた。マルケスはマレーシアで2位、オーストラリアではルール解釈を間違えて誰も予想しなかった失格処分を受け、ロレンソとの差は一気に縮まった。

そして、10月27日に栃木県のツインリンクもてぎで開催された第17戦日本GPで、ホンダ勢圧倒的有利という下馬評を覆してロレンソが優勝。マルケスは2位になったことにより、差は13点になった。

8月下旬には「机上の計算はともかく、事実上のチャンピオン争いは終わってしまったも同然」と白旗を揚げていたロレンソは、前戦で勝利した際に「可能性は2~3パーセントから20~30パーセントに広がった」と述べた。

今回の連勝で「レースでは何が起こっても不思議じゃない。チャンピオンシップが終わったというつもりはないし、状況は自分たち次第だと思う」と、決意のこもったコメントをしている。

強気な言葉通りに、ロレンソは日本GPの勝利をもぎ取った。ツインリンクもてぎは、コースレイアウト的にもマシン特性の面でもヤマハよりホンダに有利、というのが大方の見方だった。ヤマハ陣営もロレンソ自身も、それを認めている。

その不利な状況下で、ピタリと背後につけたホンダのマルケスを寄せ付けず、終盤には周回ごとにじわじわと引き離しさえした。この駆け引きを振り返り、マルケスは「ホルヘを抜こうとしたけれども、リスクが大きすぎた。終盤にはホルヘがさらにペースを上げたが、自分は限界に近い状態だったので、(2位で)20ポイントを確保する方向へ切り換えた」と話した。

ロレンソは「マルクとのポイント差を詰めるのは簡単ではないが、ベストを尽くす」、マルケスは「やるべきことに集中し、タイトルを獲得するために100パーセントの力で臨む」と意気込んだ。

マルケス有利は変わらないが、最終戦の争いまでもつれ込ませたロレンソの意地は、大逆転を引き起こす可能性をにおわせている。(モータージャーナリスト・西村章)