第16戦オーストラリアGPはレースウイークを通じて波乱が続き、決勝レースも予想外の結末を迎えた。

1週間前のマレーシアGPを終えた段階では、43点差でポイントランキングをリードする20歳のモトGPルーキー、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が圧倒的に有利な状況だった。第16戦でマルケスが優勝し、ランキング2番手のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)が3位以下ならば史上最年少の世界王者誕生となる。15戦中6回の優勝を含む14戦で表彰台を獲得してきたマルケスなら、その可能性は低くないようにみえた。

しかし、今回のレースでは金曜の練習走行から予想外の出来事が次々と発生し、選手やチームは対応に追われた。戦いの舞台、メルボルン郊外のフィリップアイランドサーキットは、コースが舗装し直されて新しい路面になっていた。

そのため、従来よりもタイヤのグリップレベルがかなり向上した。タイヤ提供メーカーのブリヂストンは、新舗装に耐えうる想定のタイヤを供給していたが、タイヤの発熱は想定を上回った。

レースを統括する関係者で安全性の協議をした結果「今回に限り、総周回数を1周減らして26周とし、選手たちはレース途中にピットへ戻って新たなタイヤを装着したマシンに乗り換えなければならない」というルールに変更された。

日曜午前のウオームアップ走行後、タイヤのデータをあらためて分析した結果、総周回数は19周に、選手たちは9周目か10周目を終える時にピットへ戻って新たなタイヤを装着したマシンに乗り換える、というようにルールが再度変更された。

午後4時に始まった決勝では、マルケスのチームメートでランキング3番手のダニ・ペドロサが9周目終了時にピットイン。ポールポジションからスタートしたロレンソも、10周目終了時にピットに戻ってマシンを乗り換えた。一方、マルケスはウオームアップ走行時に乗り換え手順のテストを実施し、その速さで周囲を驚かせた。

しかし、チームのルール解釈間違いという手痛いミスにより、1台目のバイクで11周してしまったため、失格処分となった。

レースはロレンソが優勝して25点を加算した一方、マルケスは失格のために0点。2位に入ったペドロサは20点を獲得し、マルケスとロレンソのポイント差は2レースを残して18点差に、ロレンソとペドロサも16点差に縮まった。8月末から「計算上は可能性があるものの、実際は(マルケスに)決まったも同然」と半ばあきらめムードだったロレンソは「レース前は2、3パーセントだったチャンピオン獲得の可能性が、20~30パーセントくらいに高まった」と希望をつないだ。

今週末は、栃木県のツインリンクもてぎで日本GPが開催される。ホンダやヤマハのお膝元で、さらに劇的な展開が待ち受けているかもしれない。(モータージャーナリスト・西村章)