国民体育大会(国体)が9月28日から東京で始まる。東京開催は1959(昭和34)年以来、54年ぶり3回目。2020年の夏季オリンピック(五輪)の東京開催が決定したことに比べれば、そんな話題は小さなことではないかと思われるだろうが、ことサッカーに限っては、今回の国体はのちのち重要な意味を持ってくるかもしれない。

国体のサッカー競技は、成年男子、少年男子、女子と3つのカテゴリーでタイトルが争われるわけだが、少年男子はどの世代でチームが編成されるかご存じだろうか。答えは16歳以下。高校1年生を中心に中学3年生も含めたチームとなる。

他の種目では「少年」のカテゴリーは基本的に高校3年生までであるのに対し、なぜサッカーだけは中途半端な学年で区切られるのか。それは日本のサッカー界が世界に目を向けているからに他ならない。

現在では高円宮杯U―18プレミアリーグやプリンスリーグなどが整備され、高校世代の強豪チームに属する選手は1年を通して公式戦をこなしている状況だ。チームの主力となる3年生や2年生は、当然のごとく過密日程のなかに置かれる。しかし、そのチームにあって公式戦から遠ざかっている学年がいる。それが16歳の1年生なのだ。

U―17ワールドカップ(W杯)という世界大会があるにもかかわらず、日本サッカーの強化のネックとなっていた世代。高校受験のために中学3年生でサッカー部を引退した選手と、上級生がいるために才能があっても出場機会に恵まれない高校1年生。この谷間を強化することを目的に、2006年からサッカー少年男子の部は現在の形態を取るようになった。

東京五輪が開催されるのは、いまから7年後。五輪のサッカー男子は他の種目と違い、オーバーエイジ枠を除けば23歳以下の制限がつく。現在の16歳の少年が7年後に迎える年齢は23歳。今年の東京国体に出場する少年男子の選手たちが東京五輪チームの中核を成すことは間違いないのだ。

おそらく東京五輪を目指すチームには、これまでにない強化が施されるだろう。世代別に限れば、1979年に日本開催されたFIFAワールドユース選手権(現U―20W杯)に向け、松本育夫監督が足掛け4年に渡って強化した代表チーム以上のものになるはずだ。

うれしいのは、これらの選手の成長をファンは間近で目にすることができるということだろう。確かに例外はある。母親が日本人で、イングランドの名門トッテナム・ホットスパーのアカデミーで10番をつける現U―16日本代表のサイ・ゴダードや、東京五輪時に19歳となっているバルセロナ下部組織の久保建英はヨーロッパで技を磨くだろう。しかし、それ以外の選手が海外に移籍するにはまだ時期的に早い。必然的に強化のベースはJリーグになるはずだ。そして東京五輪がJリーグ人気回復の起爆剤になれば、これ以上言うことはない。

2008年より落ち込みが続き、観客動員数の減少に歯止めのかからないJ1。危機感を抱いたJリーグ側は9月17日、低迷する現状打破のために、2ステージ制という荒技に出た。40クラブの社長ら代表者が出席して2シーズン制のポストシーズン案に反対したのは、わずか2クラブだけだったという。しかし、どんな美辞麗句を並べたとしても、公平さで1シーズン制に勝るレギュレーションはない。そう思いながらも決まったものは受け入れるしかないのだが。

読者の方は、なんで日本代表があんなに人気があるのにJリーグが低迷しているのかと思うかもしれないが、じつのところ日本代表人気とJリーグ人気はほとんどリンクしていない。それは現在、日本代表の主力のほとんどが海外組で占められているからだ。

9月10日に横浜で行われたガーナ戦。新横浜駅からスタジアムに向かう道すがら、女性ファンの7、8割がたが「背番号6」のレプリカユニホームを着ていた。その光景を見て、「この人たちは内田篤人のファンであって、必ずしもサッカーファンなのではないのかも」という思いが沸いた。おそらく彼女らのなかにはJリーグを見たことがない人も多いのではないだろうか。逆にJリーグのコアなサポーターは、自チームの選手がいない日本代表の試合を見る気にならない人も確実にいるだろう。その意味で五輪とはいえ、代表チームとJクラブを結びつける可能性のある現在のU―16世代の選手たちは、国内サッカーを再び盛り上げる大きな可能性を秘めている。

今回のJリーグが打ち出した2ステージ制について、一つ気になることがある。1ステージ17試合の短期決戦になることで結果を求められる監督は即戦力の完成された選手ばかりを起用して、思い切った若手の起用がしにくくなるのではないかという危惧だ。

いま日本は、自国で五輪を戦う代表チームという最高のコンテンツを手に入れた。その強化を台無しにしかねない可能性が2015年から始まるJ1にはある。Jリーグ側は「収益が改善されれば、いずれは1ステージ制に戻す」と言っているが、新制度で見込める増収は、たかだか10億円だという。目先の金銭に惑わされ、奇をてらって本筋を外すことで、取り返しのつかないことにならなければいいのだが。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている