ことしの全国高校野球選手権大会は、前橋育英(群馬)の初出場優勝で幕を閉じた。延岡学園(宮崎)日大山形、花巻東(岩手)を含めた4強は、いずれも決勝進出経験のないチームばかりだった。前回優勝の大阪桐蔭や春夏連覇の懸かる浦和学院(埼玉)など、有力視されたチームは早々に敗退した。率直に言って、この結末を予想した人は皆無に近かったのではないだろうか。

ネット裏から全48試合を見て、出場校間の差が小さくなっていることを痛切に感じた。中でも東北勢の強さが目を引いた。例えば、日大山形の初戦の相手は一昨年に全国制覇した日大三(西東京)だった。出場校中チーム打率トップと伝統の強力打線は健在で、今大会も優勝候補の一角に挙がっていた。ふたを開けてみれば7―1で日大山形の快勝。スイングの鋭さは、むしろ日大山形の各打者にあった。その後も作新学院(栃木)明徳義塾(高知)と全国区の強豪をなぎ倒した。花巻東はプロ野球西武で活躍する菊池雄星がエースだった2009年以来の準決勝進出。今回は傑出した選手がいない中での躍進だ。県内出身者だけの選手構成で初出場した弘前学院聖愛(青森)も、青森山田、八戸学院光星の県内二強を破って甲子園切符をつかみ、16強入りと好結果を残した。仙台育英(宮城)は1回戦で浦和学院の夢を阻止し、聖光学院(福島)と合わせて史上初めて東北から出場した5校が初戦を突破した。どれも実力が伴っての勝利だった。

とりわけ日大山形が鍛えられていると感じた。ことしは酷暑で土が乾いていたせいか、大会中盤あたりから内野でゴロが高く弾む傾向があった。通常と同じ感覚でゴロをさばこうとして、目の前で大きくバウンドした打球に内野手が頭を越される場面が散見された。イレギュラーバウンドであり、仕方ないことではある。しかし、日大山形の内野陣は一歩前に出て確実に捕球し、影響をものともしなかった。土台がしっかりしているからこそ、状況の変化にも対応できる。大会を通じて堅実な守備を見せた二塁手の中野は「消極的に後ろに下がったら駄目。下がるとバウンドが合わないから、前に出ることを意識している」と語り、その口調からは自信が感じ取られた。ある強豪校の監督が「ことしの東北勢はどこも守りがいい。特にショート。今は(打者に引っかけさせる)フォークボールやチェンジアップ、スライダーが流行しているから、ゴロをしっかり捕れないと勝てない」と評したが、全4試合で無失策と安定した守備力は大会ナンバーワンだったと思う。

甲子園で東北勢が上位に進むたび「大優勝旗が白河の関を越えるか」と話題になる。冬場はグラウンドが使えないなど、雪国ならではのハンディはある。ただ、東北勢が全国の舞台で勝てなかったのは昔の話になっているのではないだろうか。一昨年の夏から3季連続で八戸学院光星が決勝の壁に跳ね返されたものの、頂点にあと一歩まで迫った。「白河の関越え」が果たされる日はごく間近に迫っていると感じている。折しも今、全国各地で来春の選抜大会出場を目指した秋季大会がたけなわである。

長井 行幸(ながい・みゆき)1984年、千葉生まれ。2007年、共同通信に入社し大阪支社勤務。阪神を経て高校野球、ラグビーを担当。