日本国内で行われる今年最後の9月シリーズが終わった。ここのところ、アジア勢以外のチームに手痛い洗礼を浴びせ続けられていた日本にとっては、それが決して強い相手とは言えないとしても、内容的にも主導権を握る久々の快勝は良いことだった。人によって見方の違いこそあろうが、グアテマラに3―0、ガーナに3―1の結果は、行き詰まり感の見えていたチームに心を整える機会を与えたのではないだろうか。

大阪での9月6日のグアテマラ戦が終わった後に、友人記者と食事の機会があった。出るのは、「まあ、飽きもせずに」と言うほど、相変わらずサッカーの話題だ。「でもグアテマラはFIFAランキング93位だからな…」。ちなみに日本は37位だ。友人はそこで言った。「いいんだよ、相手がどうあれ久しぶりに無失点だったし、3点取ったんだから」。そこで話題は試合後の記者会見の場面になった。

日本代表の試合に限らないが、試合後の日本人記者の口から必ず発せられるのが、次の言葉だ。

「課題はなんですか?」

これ以上ない勝利を収めた後にでさえ、監督はこの約束事のような質問にさらされる。しかし、考えてみるとさまざまな国際大会で完封勝利を飾った監督に、この類の質問を投げかける外国人記者の姿をあまり目にしたことはない。相手のレベルはどうであれ、きれいな勝利を収めた日に限っては、素直に勝利を喜ぶ。「だからザッケローニだって、今日はこれでいいじゃんって思っているんじゃないの。ラテンだからね」。もちろん、どんなレベルでも課題がない試合など存在しない。ただ、それは翌日から整理されていって克服されるべきもの。試合終了直後から課題をあぶり出さなければ気が済まないのは、日本人特有の性急さか。それが工業も含めた日本の先進技術の高さにつながっているのは間違いないだろうが、イタリア人指揮官にしたら「そう急ぐなよ」という気持ちになっても、不思議はない。

2010年の南アフリカ・ワールドカップ(W杯)でベスト8に進出。アフリカ勢として最も組織的なサッカーを展開したガーナは、FIFAランキングで日本より上位の24位。ところが来日したメンバーを見たら、ある程度予測はしていたがギャン、プリンス・ボアテング、エシアンの抜けた1・5軍のチームだった。

アフリカ予選を戦ったばかりでの強行来日。ゲームとしての質の高さを求めるには無理があったが、日本よりはるかに格上のチームと対戦したコンフェデレーションズカップ、そしてウルグアイ戦で心身ともに崩れた日本の守備の決まりごとを原点に立ち返って再確認する上ではちょうどいいレベルのチームだった。

チームというのは常に進化を続けるわけではない。ときには停滞もするし、後退する場合だってある。そのときに大切なのは立ち返る基本の形があること。基本形のないチームが迷宮にはまり込んで抜け出せずに瓦解してしまう。そういうJリーグのチームを度々目にしてきた。その意味で現在の日本代表は立ち返る形を持っていたのが救いだった。

同じプレーが技術と判断力に優れた上位国の「個」に通用するのかは分からない。簡単に局面をいなされてしまうのかもしれない。ただ、チーム全体で守るという意識は、強く伝わってきた。守備に難があると言われた柿谷曜一朗や本田圭佑が長いスプリントで相手のボールの出所にプレッシャーをかける場面が度々見られた。個人的感想で言えばボランチにしては守備力に物足りなさを感じさせていた長谷部誠が、ファウルにこそなったが体を張って相手を止める場面にも出くわした。少なくともこれらのプレーは、周囲の選手により分かりやすい視覚に訴えかける意思としてチームに広がっていったのではないだろうか。

守備についてはDF今野泰幸も「危ない場面もあったけども、組織として守ることはまずまずだったかなと思う」と試合後にコメント。ここのところ守備に関しては危機感を通り越し、悲愴感さえ伝わってくる言葉しか聞こえてこなかっただけに、状況は少し改善されていると思えた。

日本より明らかに格下だったグアテマラ、そして強力ではないにしろ個人の資質では本田をして「身体能力では世界レベルと感じた」というガーナ。この2連戦は、当初マッチメークのミスではと思われたが、日本らしさを取り戻すには結果的に良かった。言葉こそ悪いが、自信を失いかけていたチームの効果的な咬ませ犬になってくれたのではないだろうか。

その効能をザッケローニ監督自身も感じているようだ。

「この10日間でたくさんのことができたし、チームとしてもいろいろと整理することができた。チームに優先順位をつけ、一つずつ植えつけ、復習する作業ができた」

そして10月の欧州遠征、セルビアとベラルーシの2戦は、指揮官の言う「ディティールの部分に入る」段階になるのだろう。

それにしてもスペインリーグ2部のグアダラハラに所属するガーナGKブライマー。彼が日本に勢いをつけてくれたことは疑いない。トップレベルのGK相手には、現在ではほぼ入らないペナルティーエリア外からの香川真司、遠藤保仁の2本のシュート。

「あれは相手GKに助けられた。普通入らないでしょう。特に遠藤の2点目は…」

あれ、こういうことが日本人特有の課題をあぶり出すということか。反省!

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている