約1カ月後に迫ったF1日本GP。ことしは鈴鹿サーキットでの開催25回目となる。それを記念して鈴鹿サーキットが準備しているのが、初の日本人フル参戦ドライバー中嶋悟と、その息子でレーシングドライバーの一貴、大祐の親子3人によるF1マシンのデモ走行だ。往年のF1ファンには、このデモランが見たいから、ことしは久しぶりにF1を見に行くという人も多い。

そんな中嶋親子3人をインタビューする機会があり、親子の絆や、F1まで行った一貴と、現在は父親のチームで走る大祐について伺うことができた。よくプロ野球やサッカー選手が、同じスポーツをする息子との関係が難しいという話を見聞きするが、レーシングドライバーの世界にもそうした話は共通していた。

「アスリートだった親はたぶん皆同じ気持ちだと思いますが、才能はアドバイスできないから、子どもが望んでも必ずその職業に就けるわけじゃない。2人はそこを自分の力で乗り越えてきたわけで、そこは褒めてやりたい。結果として同じ世界で仕事をするようになった、というのが正直な感想です。今回の親子3人デモ走行にしても、私と大祐はホンダさん、一貴はトヨタさんにお世話になっているわけで、実現できるのは一貴に許可を与えたトヨタさんのおかげなわけです。実は大祐とは、デモランをしたことがあり、親子で走るのはこんな感じか、という感覚は経験したのですが、親子3人は初めてですし、今回は3台が並ぶように走るランデブー走行と聞いているので、また違った印象を受けるでしょうね」と悟さんは語った。

どんなことであれ、親子で同じことを経験することには、多くの人々がうらやましいと思うことだろう。また、子どもに対してアドバイスができないという部分も共感する人が多いに違いない。スポーツや勉強、それ以外の人生経験にしても、自分が経験したことを、うまく伝えることの難しさは万国共通だ。現に息子たちはこう答えている。「その通りだなと思うことは聞くし、そうじゃないな、と思うことは右から左でしたね」(一貴)、「僕も兄と同じです」(大祐)。

日本人初の親子F1ドライバーとなり、全員がレーシングドライバーとなった中嶋親子もまた、他のごくごく一般的な家庭と変わらない親子関係というのも、またうれしい話ではないだろうか。(モータージャーナリスト・田口浩次)