J1リーグも折り返し地点を過ぎ、19節が終了した。そのなかで一昔前と違うのは、得点ランキングの上位争いに多くの日本人選手が名を連ねていることだ。2桁の10点以上を挙げている8人のうち外国籍選手は横浜F・マリノスのマルキーニョスだけ。7人が日本人選手というのは、その活躍がそのまま日本代表の戦力に直結するだけに喜ばしいことだ。

確かに各クラブの財政状況が思わしくなく、優れた外国籍の獲得が難しくなっているという事情はある。優れた助っ人外国人が少なくなったので、リーグ自体のレベルが下がったとの声も聞く。だが物は考えよう。以前はどのような下位チームでも外国籍の選手が占めていたフォワードのポジション。そこで多くの日本人選手がプレーするということは、日本人のなかから優れたアタッカーが出現する可能性が高まることを意味するのだ。

ストライカーのポジションに得点力の高い外国人選手を置けば、チームとしての結果は出やすいだろう。だから欧州のビッククラブも、このポジションの選手をびっくりするほどの高額な移籍金を払って獲得する。しかし、ストライカーとして出来あがった外国人選手を連れてくるということは、その国の若手が育たないことにもつながる。

これは他のポジションにも言えるのだが、今年6月にイスラエルで開催されたU21欧州選手権のグループAで3戦全敗の無残な結果に終わったイングランドがいい例だ。アーセナルなど、先発にイングランド人選手が一人もいないことがよくあるが、その国のリーグがいかに盛えようとも、自国の選手が試合に出場する機会がなければ代表チームは衰退するのだ。

日本代表と同じ4-2-3-1システムを採用するチームが多くなった現在。各クラブがまだ潤沢な資金を持っていたならば、1トップのポジションは、おそらく外国人で占められていただろう。だが怪我の功名ではないが、いまこのポジションには多くの優れた日本人選手がいる。それがサンフレッチェ広島の佐藤寿人であり、セレッソ大阪の柿谷曜一朗、サガン鳥栖の豊田陽平。そして現在14ゴールと得点王争いトップを行くFC東京の渡邉千真もその一人だろう。

マリノスからFC東京に移籍してきた昨年は6ゴールに止まった。しかし、レギュラーに定着した今シーズンは、自身のなかでも何かが変わったようだ。その何かとはシュートのときの落ち着きだ。

8月3日の大分トリニータ戦で見せた先制のシーン。左サイドから中に切れ込んだ太田宏介に要求した横パスを右足で絶妙の位置にトラップすると、次のモーションでフィニッシュ。左足のインサイドで放たれたシュートは、強さを追求するのではなく、コースを正確に狙ったもの。一連の動作にはまったくと言っていいほどむだがなく、これぞ点取り屋というプレーだった。

182センチ、77キロの屈強な体。ヘディングでも左右両足でも点の取れる渡邉の持ち味がフィジカルの強さであるのは疑いないのだが、それ以上に目につくのが繊細さだ。シュートのインパクトの際にパワーで勝負するのではなく、タッチの技術で勝負する。ボールの横を擦り上げて、GKの手の届かない場所に送り込む、いわゆるポスト際に「巻く」シュートで「うまい」と思わせた場面が今シーズンは何回かある。

ただ大分戦は2点を挙げたあとにハットトリックを意識しすぎたせいだろうか、力ずくに頼って通算10本のシュートを放ちながらも、追加点はなし。本人も「2点取ってからは3点目を狙って周りが見えていなかった。周りを使ってやらなければ」と反省しきりだった。

そんな渡邉に対してランコ・ポポヴィッチ監督も全幅の信頼を置く。

「カズマは大きく成長した。点を取るだけでなくポストプレーも組織プレーもできる。ファースト・ディフェンダーとしてもチームへの貢献度は高い」

そしてこうも付け加えた。

「ただ、あまり褒めすぎると天狗になるから、ここら辺で終わっておくよ」と。

招集されなかった東アジアカップ。おそらく渡邉自身も、悔しい思いをしたに違いない。ただ、勝負は終わったわけではない。この好調を維持していけば、ザッケローニ監督も無視し続けるわけにはいかなくなるだろう。

かつてはシュートが下手というイメージが強かった日本人ストライカー。ところがこの日の鳥栖戦での柏レイソルの工藤壮人の2本のシュートを見ても「うまい」と唸らせるものが増えてきた。確かにJリーグにはワールドカップを戦うような外国人のビックネームこそいなくなったが、得点王争いの上位に日本人の名前が並ぶことは、決して悪いことではない。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている。