2013年の鈴鹿8時間耐久ロードレースは、ケビン・シュワンツの「現役復帰」が話題を独占した。1995年に現役生活にピリオドを打った米国人のシュワンツは、64年生まれ。ことし6月に49歳になった。80年代後半から90年代前半に活躍し、鮮やかでスリリングなライディングは今でも世界中の幅広い年齢層から愛されている。全米選手権(AMA)へ参戦していた頃に才能を見いだされ、鈴鹿8耐に初登場した85年は3位表彰台を獲得した。ロードレース世界選手権へは88年からフル参戦を開始し、スズキの代名詞といっていい存在に成長した。

AMA時代からのライバル、ウェイン・レイニーらと激しい戦いを繰り広げ、93年に年間総合優勝を達成。現役時代に使用していた34番は、今でも最高峰クラスの永久欠番とされている。今回の鈴鹿8耐は、引退から18年後に初めて本格的に走るレースとあって、世界から注目が集まった。加賀山就臣が率いるチームカガヤマ(スズキ)からの参戦で、加賀山や芳賀紀行とともに走ることになったシュワンツは、勝利を目指して本格的な体力トレーニングを続けた。

8耐のレースウィークが始まると、チームカガヤマのパフォーマンスは他のどのチームよりも熱い視線を浴びた。金曜の計時予選の上位10チームが進出する土曜日の走行では、現役時代には宿敵だったレイニー仕様のヘルメットをかぶって登場した。レイニーは93年にレース中のアクシデントで転倒し、現在は車椅子生活を送っている。当時は苛烈な関係にあった両者だが、引退後は交友を結ぶようになり、今回の鈴鹿8耐「復帰」に際してもレイニーへの敬意を表したい、という強い意向からこのサプライズ企画が実現した。土曜のお披露目の後、シュワンツにレイニーから感謝の意を伝えるメールが届いたという。

日曜の決勝レースにもこのヘルメットで臨んだ。鈴鹿8耐では約1時間ごとにライダーが交替するのが通常で「2回は走りたい」とレース前に話していた。結局は1回のみ、1時間弱の走行にとどまったが、加賀山と芳賀の活躍により、3位を獲得した。優勝は、レース中盤から圧倒的優位に立ったハルクプロ(ホンダ=高橋巧、R・ハスラム、M・ファン・デル・マーク)。2位がヨシムラスズキ(津田拓也、青木宣篤、J・ブルックス)。レースを終えた加賀山は「これでリタイアや成績が出なかったら、口先だけになってしまうと思って不安だった。ケビンを表彰台に上げることができて本当によかった」と安堵の表情を見せた。そのとなりでシュワンツは「この結果を残せたのはチームのおかげ。そして何より、ボスの力だよ」と肩をたたいて笑い、その労をねぎらった。(モータージャーナリスト・西村章)