メルセデスのニコ・ロズベルクがポール・トゥ・ウィンで勝利したモナコGP。その裏で、ある問題が発生していた。そして6月20日、メルセデスとピレリがフランスのパリのFIA(国際自動車連盟)本部・国際法廷に呼び出され、FIA、メルセデス、そしてピレリが、その問題についてそれぞれの意見を述べた後、21日に国際法廷の評決が発表された。結果、メルセデスには訓告と若手ドライバーによるテストへの自主的不参加、ピレリには訓告が示された。

果たして、どんな問題がF1界に発生したのかというと、実はコスト削減のため、現在F1ではテスト走行が大幅に規制されていて、シーズン中のテストが事実上禁止されている。しかし、ピレリが希望した場合に限り、型落ちのマシンを使用したタイヤ開発のテストが認められている。だが、どのチームも有効なデータが得られない型落ちマシンでのテスト協力には難色を示していた。そんなおり、スペインGP後に、メルセデスが2013年マシンを使い、しかもルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルクという2人のレギュラードライバーが走行を担当したタイヤテストを行ったことがモナコGPで判明した。さらに、このテストで得たアドバンテージがモナコGP優勝につながったのではないかと疑われた。この問題が浮上すると、フェラーリを筆頭にライバルチームたちが強く反発し、今回の国際法廷への呼び出し、そして訓告へとつながったのだ。

しかし、罰金でもなく、獲得ポイントの抹消でもなく、単純な訓告。さらに若手ドライバーによるテスト不参加は大きなデメリットが見当たらず、ライバルチームたちは、このFIA国際法廷の甘い裁定に噛み付いた。というのが現時点での状況となっている。

なぜこんな甘い裁定となったのか。そこにはF1独特の政治的駆け引きが働いたと見る向きが多い。厳しい評決が下り、メルセデスがF1から撤退するようなことがあれば、来年から新エンジンに切り替わるF1は成り立たなくなる可能性がある。さらにピレリが撤退した場合も、すぐに代わりとなるタイヤメーカーは見当たらない。しかしFIAの面子は保たなければならない。「阿吽の呼吸」という言葉があるが、じつはパドック全体が、今回の問題では、政治的にそれぞれの立場の役割を演じているような気がしてならない。(モータージャーナリスト・田口浩次)