アジアでは頭ひとつ抜けた存在ではある。しかし、世界のトップレベルの中に放り込まれると、時折善戦はするものの、勝ち切ることは難しい。

コンフェデレーションズカップに旅立つ前、本田圭佑をはじめ多くの選手が「優勝」を口にしたことから、あまりサッカーに詳しくない人は、日本が世界の一流国と勝負できるレベルと勘違いした人も多いのではないか。そのなかで1次リーグ3連敗という現実を突き付けられると、現在の日本代表の世界での立ち位置というのは客観的に見て、前述のような感じになるのだろう。

もちろん、この20年、日本のサッカーはびっくりするほどのスピードで進歩を遂げた。こんな国は、世界を見渡してもあまりないだろう。あるとしたら1990年以降に安定した強さを発揮するようになった米国ぐらいのものだ。

それでも、その強さはあくまでもワールドカップ(W杯)出場レベルに止まる。本大会で決勝トーナメント進出を果たすためには、前回のW杯南アフリカ大会を例に出すまでもなく、なにかの奇策が必要で、自分たちのスタイルを貫いてのグループリーグ突破はまだ難しいだろう。W杯本大会のグループリーグで、今回みたいなハイレベルな3カ国と同居したら、間違いなく「死のグループ」と表現されるはずだ。同じ組にここまでの強豪がそろうことは稀だが、2カ国は日本より地力のあるチームが振り分けられることは考えられる。そのなかで、どのようにして次のラウンドに進むことのできるグループ2位以内に食い込むか。考えると、現時点では不安要素のほうが多い。

「良い面も悪い面もいっぱい出たので、このゲームを忘れずに次につなげていければいい」。この試合のゲームキャプテンを務めた遠藤保仁が試合後に語っていたが、今後1年は良い面を伸ばし、悪い面を最低でも世界標準の普通レベルにまで改善しなければ、見通しは暗いだろう。今回のチームの悪い面は、誰が見ても明らかだ。最大の敗因は失点の多さだ。メキシコ戦に1-2で敗れたことで、今回のコンフェデ杯3試合で喫した失点は9。3試合ともにまんべんなく複数得点を与えていれば、勝ち点など稼げるはずもない。南アフリカ大会では4試合で許したゴールが2点だったことを考えれば、格上を相手に真っ向勝負を挑んだことを差し引いても、今回のチームは守備力が明らかに落ちる。

守備面でまず問題なのが、なかなか改善されないセットプレーに対する守備だ。アジア予選から失点を繰り返してきたが、この日も2点目をドスサントスの右CKから奪われている。ヘディングを決めたエルナンデスが、そう長身でもないだけにフィジカルで負けたという感じはしない。あまりにも同じことを繰り返すので、ザッケローニ監督がどのような指導を行っているのかは疑問だが、セットプレーの守備は他の要素に比べれば改善しやすいだけに、早急に対処するべきだろう。やっかいなのは、組織で連動している守備が破たんし、「個」で相手アタッカーと日本の守備陣が対峙したときだ。残念ながら今野泰幸、吉田麻也、さらには栗原勇蔵の日本のゴール前に位置するCB陣は、世界レベルと比べると見劣りがする。その意味で強さと高さを兼ね備えた中澤佑二、闘莉王のCBコンビが実現した2010年のチームは、日本サッカー史のなかのある意味での奇跡だったのだが。いずれにしても今後1年間で守備面での「個」の力が飛躍的に向上するとは思えない。その問題点をザッケローニはどう解決するのか。システムや戦術で補うのか、それとも新たな戦力を補強するのか。自分たちより格上を相手にして、自チームに勝利を呼び込むことこそが監督の務め。ここからが真の意味でザッケローニの手腕が問われる時期となる。

腰の引けたブラジル戦を除き、イタリアとメキシコ相手には、自らが主導権を握って攻め込むことができた。ただこれも、数人の選手が程良い距離感で連動したときに限り、攻撃面においても「個」の力で相手を打ち負かすという場面は少なかった。その意味で、香川真司などは、メキシコのドスサントスやエルナンデスのように良い意味でのエゴを出してもいいのかもしれない。

前回のW杯はベスト16。だから4年後のブラジル大会では、それ以上の成績を誰もが望む。ただ考えてみれば、そう簡単にはいかない。確かにメンバーには超一流チームで活躍する選手も増えて、攻撃面では現在のチームは南アフリカ大会のそれを上回るだろうが、こと勝負にこだわった試合となると南アフリカでの日本は手堅く、より現実的だった。だからこそ、そのチームを上回るにはかなりの覚悟が必要だ。

今大会の日本のMVPを選ぶとしたら、メキシコに一矢を報いた岡崎慎司を迷いなく選ぶ。今大会、国際舞台で間違いなく戦えることを証明した。その野武士をイメージさせる男が発した一言がすべてだ。「1年後のW杯に向けて死に物狂いで努力して勝てるチームを作りたい。そして、W杯で結果を出したい」。「優勝する」という言葉以前に、これぐらいの危機感を持たなければ世界では戦えない。選手ばかりでなくファンも含め、3試合を通して思い知らされた現実は、予想以上にハードルの高いものだった。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている