ちょっと情けない試合だな。ワールドカップ出場を懸けたオーストラリア戦(6月4日・埼玉スタジアム)を5日後に控えた、豊田でのブルガリア戦を見てそう思った人も多いことだろう。ただし、問題はそんなに深刻だとは思わない。失点の原因がはっきりしているからだ。2点ともに個人的なミス。修正は可能だ。とはいいながらも、カナダ戦、ヨルダン戦と、ここ3戦続けてセットプレーからの失点を繰り返しているので、守備に関しては修正されていないとも言えるのだが。

開始3分のGK川島永嗣のパンチミスによる早々の失点。あれは責められてしかるべきだろう。「相手が無回転を蹴ることは分かっていた」という川島の言葉通り、マノレフのボールは確かに「ブレ球」となり直前で変化した。しかし、である。試合開始直前から雨が激しくなったなかで、川島はパンチングと決めつけ過ぎていた。その状況でボールは体のほぼ正面に飛んで来た。

変化するであろうと予測していたボールを「点」でしか合わないパンチングで対応するのは明らかな判断ミス。キャッチング動作で「面」となる手の平でいっていたら、もし落としたとしてもゴールの中へということはなかったと思う。野球のバットでボールを打ち返すのは難しいが、テニスのラケットなら当てるのは容易というのと同じ理屈だ。その意味で代表レベルとは思えない失態だった。

このプレーでブルガリアの選手は「このGKはあまりうまくない」と思ったのは明らかだった。後半6分には左CKをイリエフが直接狙い、その後も積極的なロングシュートを放ってきたのは、GKが弱点と見たからに他ならない。川島としたら屈辱。でもその原因を作ったのは自分であることを忘れてはならない。

さらに後半25分のキャプテン長谷部誠のオウンゴール。一瞬、日本の攻める方向が分からなくなるほどの見事なインサイドキックでのゴールだった。ズラティンスキのFK。そのボールが目の前で競り合った人波の山から突然現れて、瞬間的に対応できずミスになったのだろう。

長谷部と川島という日本代表の中核を成すキーパーソンが、この日はたまたまやり玉にあがる象徴的な存在になってしまった。しかし、単純なパスミスが多発するさまを見ると、明らかにチームとして集中力に欠けていた。

「きょうに関してはフィジカルコンディションの問題があった」。0―2の敗戦の要因を語ったザッケローニ監督だが、自身がACミランなどイタリアのクラブチームで成功した3―4―3を日本代表に持ち込んだとき、なぜかこのシステムが機能しない。ブルガリア戦の前半は同監督が就任して以来、5度目の3―4―3のトライだったのだが、結局は今回もうまくいかなかった。

この日、中盤のウイングバックの位置に配されたのは右の内田篤人と左の駒野友一。このサイドバックを本職とする2人は、3バックを採用したときに、悪い意味で日本人的生真面目さが出てしまう。マイボールのときは問題ないのだが、相手ボールのときに守備意識が強く最終ラインに戻ってしまう。結局は5バックのような形になってしまい、日本がボールを奪っても両サイドが攻め上がるまでの距離はかなり長くなるのだ。

必然的に中盤の広大なスペースにはボランチの2人が残されるだけ。そこに3トップの両サイドが引いてきたとしても人数的には足りない。日本の持ち味である中盤のボール回しは機能しなくなり、この日の前田遼一のように1トップも孤立。いいところなしになってしまうのだ。

ザッケローニ監督は3―4―3について「より主導権を握ること」と採用する理由を説明した。これは高いポゼッションを維持して、相手の陣内に攻め込む回数を増やすことにつながると理解する。日本の場合、このシステムを成功させるためには中盤の両ワイドに攻撃力の高いサイドバックを配置するのではなく、守備能力のあるウイングを置いたほうがいいのではないか。いまの日本代表においては、守備と攻撃に対する微妙な意識のバランスが、3―4―3の成否を分けているような気がする。

スタンドが急角度でせり上がった豊田スタジアムの記者席からピッチを見下ろし、パスコースの少ない日本代表の前半を俯瞰していると、3―4―3はそれほどまでにも必要なシステムなのかと思う。あと半月後にはコンフェデレーションズカップも始まるというのに。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている