レスリングの五輪競技からの除外問題は、関節技のあるレスリングのグラップリングやアマチュアMMA(ミクスド・マーシャルアーツ)にも及んだ。

国際レスリング連盟(FILA)は5月18日にモスクワで行われた臨時総会で、レスリング・スタイルとして認定し五輪種目入りを目指していたこの2スタイルを、今年限りで除外することを決めた。本家の危機に新スタイルまで手が回らないことのほか、この危機を招いた“A級戦犯"ラファエル・マルティニティー前会長の手掛けたことを排除したいという感情の問題もあるという。他に、国際オリンピック委員会(IOC)に「総合格闘技はバイオレンスでスポーツにふさわしくない」という声が根強いという理由もあるそうだ。UFCが出現したのが20年前の1993年。当初は米国の多くの州で禁止されたバイオレンス格闘技も、ルールが整備され、地上波テレビにも流されてスポーツの地位を獲得したとばかり思っていた。この現実はショックだった。やはり最初のイメージが強すぎたのか。

ほとんどのIOC委員は総合格闘技をじっくり見たことはないだろう。欧州やアフリカのIOC委員に馴染みのない野球やソフトボールが外されたのだから、世界中に浸透していない総合格闘技が忌避されるのも仕方のないことかもしれない。

ただ、パンクラチオンはFILA認定スタイルとして残るという。古代オリンピックの花形競技だったからだそうだ。古代のパンクラチオンは、今のパンクラチオンより、MMAそのものの闘いだったと思う。「名前で決めたの?」と、釈然としない思いが残る。

レスリングを五輪競技に残すべく署名活動には、修斗やパンクラスといった総合格闘技の団体も協力した。米国ではUFCが米国レスリング協会を支援している。レスリングが格闘技の根底をなす競技であり、その発展は自分たちの発展につながる、という思いがあればこそだろう。今はお家の危機を救うため必死のレスリング界。何としてもこの危機を乗り越え、その後は時代にマッチしたスポーツに変革して世界的な人気を獲得し、総合格闘技を五輪競技にすべく恩返しをしてほしいと思う。(格闘技ライター・樋口郁夫)