チーム名「アルコイリス」はポルトガル語で虹を意味する。神戸市を拠点として2011年フットサル女子の全日本選手権を制した強豪だ。主軸のほとんどが日本代表経験者で、最前線の「ピボ」は自身も周囲も生かせる攻撃の鬼、若林エリが務め、両サイドの「アラ」はテクニシャン中野絵美と高速アタッカーの関灘美那子。守備の要の「フィクソ」にはロングシュートも得意な井野美聡が待ち構える。型にはまった戦術を取らず、「全員がスペシャリスト」(井野)という特長をフルに生かした攻撃スタイルは、多彩な色で織りなされる虹を連想させる。

その強豪が、いま「チャレンジ&リベンジ」と燃えている。全日本選手権史上初のV2を狙った昨年、最大の関門ともいわれる兵庫県予選を激闘の末に突破したが、続く関西予選で涙をのんだ。本大会出場を懸けた大阪代表チームとの一戦。試合開始からゴール前に張り付くような守備態勢を敷いた相手に、前後半40分で「100本くらい」(若林)のシュートを浴びせたが、0―0でタイムアップ。PK戦に持ち込まれて敗れた。

国内の女子フットサルの主要大会は年に二つある。10月の全日本選手権と3月のトリム・カップ。後者は冠スポンサーが付き、深夜にTV放映もある大会だが、各県の選抜メンバーで戦う。だから日頃苦楽を共にするチームでの大勝負の舞台は、年に一度の全日本というトーナメントしかない。それだけに勝敗が感情にもたらす影響の大きさは半端じゃない。所用のため試合途中で会場を去ったため、結果を聞こうと連絡したがつながらない。ネットニュースも公式HPの速報もなければ、ツイッターやフェイスブックの書き込みもない。ようやく井野選手から「負けました」とメールが来たころには日付が変わっていた。一戦に懸ける情熱は、プロスポーツではなかなかお目にかかれないものがある。見る側としては、そこに心を打たれるわけだが、もう少し勝負や観戦のチャンスがあってもいいように思う。

日本生産性本部が出している「レジャー白書」によれば、フットサルの競技人口は08年の280万人から、11年は370万人と順調に増えた。昨年は男子のワールドカップ(W杯)で日本代表が16強入り。サッカー元日本代表の三浦知良が出場したことでも注目された。でもその後、Fリーグ(男子)の観客動員は思いのほか伸びていない。日本フットサル連盟の加盟チーム数も近年は頭打ち状態という。少人数で手っ取り早く始められる一方、第一線の競技レベルへの関心につながらないのが、フットサルが直面している課題でもある。男子の奮闘から約1カ月後、女子日本代表がポルトガルで行われた最高峰の世界大会ワールドトーナメントで6位に入ったことは、ほとんど報道されなかった。

昨年末、神戸・元町の観光地中心部にある名物フットサル場が閉鎖した。営業最終日には、ここでフットサルを始めた井野ら有志約60人が集まり、コートへの感謝を込めたラストマッチが催された。「多くのフットサル人にとっての原点。やっぱ寂しいよ」と井野は言う。若林は「競技フットサルをもっと認知してもらう努力をしていかないと。10年後、20年後に少し影響するくらいでもいい」。2人は毎週コーチを務める個人参加型のクリニックを、地方に出向いて行うことも始めた。「見に来てくれた人を面白くするのも普及活動」と、日本一返り咲きへの決意は並大抵じゃない。「アルコ」の伸びやかなプレースタイルには、そうしたメッセージも込められている。鮮やかなエメラルドグリーンの集団が見せるプレーの一つ一つを、一人でも多くに見てほしいと思う。

小林陽彦(こばやし・はるひこ)1987年生まれ。神奈川県出身。2009年に共同通信に入社し、大阪運動部でプロ野球オリックス、サッカーG大阪担当などを取材し13年から阪神タイガースを担当。