国際オリンピック委員会(IOC)理事会によるレスリングの2020年五輪からの除外勧告は、当初は世界のどのメディアも理由が分からなかった。各メディアの取材の結果、国際レスリング連盟(FILA)の傲慢さのほか、男女差を埋めようとしないFILAの姿勢に一因があったことが判明した。

レスリングは女子が採用された04年アテネ五輪以来「男子14種目(階級)、女子4種目」が続いている。10種目の男女差は五輪で実施されている競技の中で最多。IOCのクリストファー・デュビ競技部長は、グレコローマンが男子のみにあり、女子にないことが「IOC内で常にあった論議」と話した。FILA内で論議されたことはなかった。IOCからの通達が遮断されていたのだと思う。

そこで浮上するのが、男子の階級を減らして女子グレコローマンを導入すること。男子にできることが女子にできないことはないわけで、マラソンやジャンプなど、かつて「女子には不適当」と思われていた種目を女子がやるようになっているのだから、女子グレコローマンの導入は当然の流れかもしれない。

しかし、疑問は残る。投げ技の多いグレコローマンは、柔道の一本背負いのような投げ技だけではなく、相手の胴体を締め、空中高く持ち上げるような技もある。当然、腰のみならず胸を締めるケースがフリースタイルより多くなるわけで、それが女性の体、特に将来母親になった時に悪影響を与える可能性は高いような気がする。

スポーツ医科学の専門家の意見を聞いての判断が必要と思うが、レスリングに打ち込んだ末に女性としての体に障害が残るようでは、スポーツとは言えない。全ての種目で男女を実施するのが、必ずしも男女平等ではない。新体操やシンクロなど、男子の五輪採用を求められていない種目もある。「男子フリースタイル4階級、男子グレコローマン4階級、女子8階級」という男女同階級であるなら、IOCは納得するのではないか。男女差の是正は急務だが、女子グレコローマンの採用は慎重を期する問題だと思う。(格闘技ライター・樋口郁夫)