アメリカ合衆国テキサス州のオースティンで開催された第2戦アメリカスGPでモトGPクラスルーキーのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム/スペイン)が優勝。20歳63日という若さで勝利したことにより、史上最年少優勝記録を31年ぶりに更新した。

マルケスは、前日の予選でもポールポジションを獲得し、こちらの最年少記録も更新をしたばかり。ちなみに、これらの両記録をマルケスに破られるまで保有していたのは、ホンダの大先輩にあたるフレディ・スペンサーだ。スペンサーは20歳196日で初勝利(1982年ベルギーGP)を挙げ、翌年に年間総合優勝を達成。当時は天才の名をほしいままにし、以後も長年、彼の記録を破る者は現れなかった。だが、31年後の2013年に、あらたな才能がいとも簡単にその記録を書き換えてしまった。偉大な記録が塗りかえられる時というのは、えてしてこのように、拍子抜けするほどあっさりと事が運ぶものだ。

第2戦の戦いの舞台となったサーキット・オブ・ジ・アメリカスは昨年竣工したばかりのコースで、モトGPのレースが行われるのは、今回が初めて。そのために、ホンダとヤマハは開幕前の3月にプライベートテストを実施し、マルケスもそのテストに参加をした。そのテストで最速タイムを記録し、開幕前に他のサーキットで実施したテストでも高い資質を存分に発揮していたことから、「ひょっとしたら……」という期待は集まっていた。だが、テストと実戦は違う。いくらモトGPの将来を担う逸材でも、経験豊かな世界最高峰の選手たちが、そう易々と勝たせてはくれないだろう。そんな冷静な見方も、一方にはあった。

だが、開幕戦のカタールGPでチャンピオン候補の選手たちと互角の戦いを繰り広げ、マルケスは3位表彰台を獲得した。今回のレースウィークでも練習走行で再三、トップタイムを記録。期待は予想へ、予想は前兆へと変化していった。

現地時間午後二時に始まった決勝レースは、序盤周回に、チームメイトで同国の先輩ライダーでもあるダニ・ペドロサの背後にピタリとつけた。この二名が脱け出す形で推移したレース中盤に、マルケスは機を見計らって一気に前に出た。意地で食い下がるペドロサに最後は1.534秒差をつけて、トップでチェッカーを受けた。

「カタールで表彰台に上がれたこともうれしかったけれども、ここで勝てたのはさらにうれしい」とマルケス。目をくりくりとさせて喜びを素直にあらわしながら、「でも、今年が1年目であることを肝に銘じて、チャンピオン争いよりも毎レースを大切に戦っていきたい」と謙虚な姿勢も崩さない。

史上最年少の総合優勝は21歳8カ月。こちらもフレディ・スペンサーの記録だ。参考までに、1993年2月17日生まれのマルケスが21歳8カ月を迎えるのは、2014年10月。来シーズンの終了直前時期である。(モータージャーナリスト・西村章)