新学期や新年度を迎えた4月、モータースポーツの世界でも、数々のカテゴリーが開幕戦を迎えている。中でもレースファンの注目を集めているのが、小林可夢偉が参戦するWEC(世界耐久選手権)シリーズだ。世界三大レースと呼ばれているル・マン24時間レースもWECシリーズの一戦である。

可夢偉はアジア人初のスクーデリア・フェラーリドライバーとして、AFコルセというチームから出場。スクーデリア・フェラーリというのは、フェラーリF1チームの正式名称であり、フェルナンド・アロンソやフェリペ・マッサなどと同じ、フェラーリの一員というわけだ。ただし、現在の契約ではF1シートは約束されておらず、フェラーリが用意したレースがWEC参戦だった。カートからフォーミュラへと順調にステップアップしてきたため、GTカーなどと呼ばれているスポーツカーレースは初挑戦であり、速さがまるで違う別クラスのマシンと混走した経験がない。初戦のシルバーストーン6時間レースで、いきなり2位表彰台を獲得して能力の高さを証明したが、「WECではさらなる経験が必要だ」と自身のホームページで語った。

この自身の分析に同意するのが、今年WEC2年目、さらにスーパーGTレースなどで混走の経験を積んでいるトヨタの中嶋一貴だ。「F1は周回遅れになると遅いマシンに対してブルーフラッグが出て、後ろから速いマシンが来ていると分かりますが、WECではブルーフラッグがないですし、なにより速度差が本当に大きいので、可夢偉が乗るGTマシンだと常にミラーに気を付けないといけないと思います。しかも、同じカテゴリーのマシンとはレースしているわけで、抜かれるにしてもタイムロスはしたくない。単純に走るだけなら、1レースで慣れることはできます。しかし、勝利を争うとなると、駆け引きを含め、数レースの経験が必要かもしれないですね」

実は今年のWECには、トヨタから中嶋一貴が、ガルフ・レーシングからは井原慶子が参戦する。そしてル・マン24時間レースではさらに多くの日本人ドライバーがスポット参戦する可能性がある。小林可夢偉には早くF1に復帰してほしいと強く願うが、これだけ多くの日本人ドライバーが参戦するWECにも、今年は大いに注目したい。(モータージャーナリスト・田口浩次)