2013年のチャンピオン最有力候補、といっていいだろう。昨年は全18戦中で優勝6回、2位10回、という高水準の成績で、2010年以来2回目の年間総合優勝を達成した。このアベレージの高さこそがホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)の持ち味だ。現在、25歳。アスリートとして心身ともに絶頂期にある年齢だ。ここ数年、最大のライバルは、同じスペイン人で2歳年上のダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)。昨年後半戦はペドロサが怒濤の追い上げを見せて逆転チャンピオン獲得を狙ったが、最終的には18ポイント差の年間総合2位、とわずかに及ばなかった。

2月上旬と下旬の2回、マレーシア・セパンサーキットで計6日間のプレシーズンテストが実施されたが、そこでの彼らふたりの走りは、今シーズンも激しい争いを繰り広げることを充分に予感させた。2月上旬のテストでは、ペドロサが3日間を通じてトップタイムを記録。2回目のテストでも初日はペドロサが最速だった。しかし、2日目にはロレンソがペドロサをわずかに上回る。3日目にはペドロサがこの日の最速タイムを刻むものの、3日間の総合タイムでは2日目に記録したロレンソのタイムがベストだった。この3日目には、ロレンソはレースを想定したロングランも実施し、持ち前のハイアベレージを存分に発揮。全周回にわたって、淡々と高水準のラップタイムを維持し続けた。

ロレンソが常に安定した速さを維持できる理由について、彼がモトGPに昇格してきた2008年から至近距離で見続けてきたバレンティーノ・ロッシは以下のように分析する。

「ホルヘは250CCクラスからやって来て、ずっとヤマハのYZR-M1に乗り続けている。(当時800CCだった)バイクは、2ストローク250CCに特性が似ていたから、自分のライディングスタイルをうまくM1に合わせることができた。今の彼は、純粋な250CCスタイルと、ホンダ型の加速スタイルのちょうど中間にいる感じ。ペドロサのように加速が強烈なわけではないけど、コーナースピードがすごく速い。僕たちヤマハのバイクでは、ホンダのような乗り方をできない。でも、逆もまた真なりで、ホンダではヤマハのようには乗れない。ホルヘは250CC時代も強かったし、モトGPでも最初からYZR-M1で大きな経験を積んできた。そのあたりが、強さの理由だろうね」

ロレンソ自身は、2回のマレーシアテストを終えて、ペドロサとの差を「少なくとも現状では似たようなレベル」と語り、今季のチャンピオン争いは「(自分とペドロサ、ロッシ、マルケスの)4名になると思う」と述べた。

3月末には、スペイン・ヘレスサーキットで開幕直前の最終テストが行われる。実戦を想定したそのテストでも、ロレンソが高水準の安定した走りを披露することは、間違いないだろう。(モータージャーナリスト・西村章)