2月5日から始まったF1合同テスト。ひとりのドライバーが大いに注目を集めた。マクラーレンからメルセデス・AMGへ移籍したルイス・ハミルトンだ。

彼の経歴は、ときおりF1界におけるシンデレラストーリーとして伝えられている。そのプロローグは1995年まで遡る。当時10歳だったルイス・ハミルトン少年が、イギリス国内のカート王者となり、当時のマクラーレン代表ロン・デニスに対して「いつかマクラーレンに乗り、あなたのためにレースをしたい」と自らをアピール。それに対してロン・デニスが「9年たったら電話しておいで。その時、席を考えよう」と返した有名なエピソードが残っている。その3年後、ルイス・ハミルトンはマクラーレンと契約。1999年からマクラーレンの若手育成プログラムドライバーとして、カート、フォーミュラ・ルノー、F3、GP2を戦い、“ロン・デニスの秘蔵っ子"として2007年にマクラーレンドライバーに抜擢されたことで、F1界のシンデレラボーイとして大きく取り上げられたのである。そして2008年には、1999年のミカ・ハッキネン以来、マクラーレンドライバーとしてのワールドチャンピオンを獲得している。

そのルイス・ハミルトンがマクラーレンを離脱するというだけでも大ニュースだったのだが、移籍先がミヒャエル・シューマッハーの後釜としてのメルセデス・AMG。さらにはカート時代チームメートだったニコ・ロズベルクとのコンビ再結成と、話題には事欠かないまま合同テストを迎えたこともあり、彼の一挙手一投足に注目が集まったのだ。

そんなルイス・ハミルトンの新車テストは、コースインした1周目にリヤブレーキトラブルからタイヤバリアを直撃するクラッシュという不運な船出となった。しかし、本人はそうしたネガティブな感覚は一切持たなかったようだ。

「まあ、誰だってマシントラブルには驚くよ。僕はこれまでに何度もクラッシュしたことがあるし、そのリストのひとつになっただけだね。そして、色々な人が僕の移籍を間違いだというけれど、それは彼らの判断だ。僕は素晴らしいチームに来たと感じている」

ルイス・ハミルトンのシンデレラストーリー第二幕がどのように展開するのか、ぜひともレッドブル、フェラーリ、マクラーレンの3強に挑む姿を期待したい。(モータージャーナリスト・田口浩次)