柔道の全日本女子強化選手15人が園田隆二前監督らを告発したことが明らかになった日から、ずっと考え続けてきた。彼女たちをそこまで追い詰めたものはいったい何だったのか。あんなことこんなことと、柔道界の体質や慣習を挙げることはできるが、今回のことに関して行き着くのは、日本代表の選考方法である。

柔道の場合、代表選考の対象となる大会は国内外に複数あるが、最終的に決めるのは、監督やコーチもメンバーである強化委員会による話し合いだ。つまり、主観の入る要素が大いにあり得る仕組みとなっていて、以前から「分かりにくい」「選考基準があいまいだ」などと指摘されてきた。

一方、選手からすると、どんなに努力しても結局は選ばれる立場にあるから、強化委員の心証を害することはなるべく避けたい。だから少しくらい理屈に合わないことがあっても、夢の実現のためなら当たり前のように耐えてきただろう。幼いころから苛烈な競争をくぐり抜けて生きてきたのだ、強化選手ともなればちょっとやそっとのことではびくともしない理不尽への耐性を備えている。しかし、その我慢強さは、暴力行為やパワハラを許す環境として利用されてしまった。選手たちは「逆らうと代表になれない」と脅されているような思いで日々を送っていたのだ。

そう考えると、問題の根本解決のためには、監督らと選手との間にある主従の構造を解体するような、代表選考方法の見直しが必要ではないか。そうでなければ、いくら優秀な人材を監督に据えても、それが女性であったとしても、また同じことが起こり得る。

そこで次のようにするのはどうかと提案したいと思う。

(1)五輪や世界選手権の代表には、現在ある二つの国内の代表選考会、全日本選抜体重別選手権と講道館杯で優勝した者に決定する。

(2)両大会の優勝者が異なる場合は、両者によるプレーオフを行う。

(3)五輪の代表選考において、国際柔道連盟の定める世界ランク基準(男子22位以内、女子14位以内)外の選手が優勝した場合には、両大会の2位から順に同基準内の選手にプレーオフ出場の権利が与えられる。

つまり、選手は二つの代表選考会で優勝すれば代表にすんなり決まり、どちらかに勝てば、プレーオフに挑戦する権利をつかむ。全ては結果によって決まるから、選手は強化委員のご機嫌をうかがう必要はなくなり、見ている方としても明快で納得できる。もちろん、他にも良い方法があるだろう。大切なことは、選手の権利が保障されるような選考法であるかどうか。柔道に携わる全ての人に、これまでの方法論にこだわらない発想の転換が求められている。(スポーツライター・佐藤温夏)