「何がいいって、彼の心構えだよ。初年度からチャンピオンを獲りにいこうとするかのような姿勢はとてもいいと思う」「末恐ろしいね。まだ若いから今後ますます成長していく余地がある、ってところが何よりの脅威だ」

これらの言葉はいずれも、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)が、今季からモトGPに昇格してきたマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)を評したものだ。2月5日から7日まで、マレーシア・セパンサーキットで行われた2013年最初の合同テストで、19歳のマルケスは初日、2日目、とトップから僅差の3番手タイムを記録した。自分より上位にいるのは、レプソル・ホンダの先輩ライダーにして最高峰8年目の今年こそ悲願の王座獲得を狙うダニ・ペドロサと、昨年の総合優勝者、ヤマハ・ファクトリーのホルヘ・ロレンソ。心身ともに最高潮を極める両選手の直後にあっさりつけたのだから、ロッシが冒頭のような言葉で賞賛するのも当然だろう。

そのことを伝え聞いた当のマルケスは、

「モトGPが難しいのは、1周だけなら速く走れるかもしれないけど、コンスタントに速さを保ち続けるのは非常に困難だというところ。バレンティーノがほめてくれたことに、もちろん感謝をしているけど、僕は彼がトップ勢に戻ってきたのを見ることができて、とてもうれしく思っているんだ」と話した。

ロッシは今回のテストで初日、2日目と4番手タイムだったが、最終日はマルケスを上回って3番手。ドゥカティで過ごした一昨年と昨年は全くといっていいほど思い通りに走れず、自分はライダーとして終わってしまったのではないか、という不安もおぼえたという。しかし、ヤマハに復帰していきなりトップに肉迫するタイムを記録し、スーパースターの健在ぶりをしっかりとアピールした。だが、そのロッシもこの2月16日で34歳。一方のマルケスはその翌日に20歳になる。経験と技術ではロッシがはるかに優るものの、体力はこれから下降の一途をたどってゆく。だからこそロッシは、25歳のロレンソや27歳のペドロサと互角に争うのは容易なことではないだろう、とも語っている。

しかし、古巣のヤマハに復帰を果たし、己がまだトップグループで走れることを確認できた意義は大きい。10年以上行動を共にする専属クルーたちの士気も、昨年までとは比べものにならないほど高まっているという。それも当然だろう。マシンの調整や方向性の探求に夜を徹して頭を悩ませる必要がないのだから。「だって、今年の彼らは、夕方6時に仕事を終えてビールを飲むことができるんだからね(笑)。こういうことは、チームの士気や雰囲気作りにも非常に重要なんだ」

成長著しいマルケス、アスリートとしてのピークを極めるロレンソとペドロサ、そして復活を遂げたロッシ。今年のモトGPは、3世代の4選手がそれぞれの持ち味を発揮して真っ向からぶつかりあう勝負を繰り広げるだろう。(モータージャーナリスト・西村章)