各地でJクラブが2013年シーズンに向けて始動した。選手にとっては一年一年が勝負であることは疑いのないところだが、今年は特に大事な年になるだろう。というのも、来年にはブラジルでワールドカップ(W杯)が開催されるからだ。確かにサッケローニ体制下での日本代表の第1グループは、本田圭佑や香川真司などの欧州組が中心になる可能性が高い。しかし、当然のことながらJリーグ組も23人の登録メンバーに入ってくる。選手にとって、W杯メンバーに名を連ねるというのは大きな勲章だ。その意味で来たるシーズン、Jリーグで目覚ましい活躍を見せ、日本代表に加わってくるフレッシュな戦力の出現を、多くの人が期待しているだろう。

近年のJリーグを見ていると、「今年はどんな驚きがあるのだろう」と思わされることが多い。日本経済の低迷が各クラブの経営に影響していることもあるのだが、Jリーグがスタートした当時のように「財力のあるチームが勝つ」という構図が薄れてきているからだ。それは必ずしもいいことではないのだが、少なくともそれぞれのクラブを応援するサポーターにとっては、現在のJクラブの力関係は、「やり方によっては何とかなる」という思いを抱かせるのではないだろうか。

海外ではリーグにおける各クラブの立ち位置は3種類に分かれる。1番目は優勝を狙うチーム。2番目は中位をキープし、状況によっては優勝争いの一角に食い込むチーム。そして3つ目は2部に降格しないことを目標とするチームだ。イングランド・プレミアリーグでは、昨シーズン、44シーズンぶりにマンチェスター・シティが優勝を飾ったが、タイトル争いは基本的にはビッグ4と呼ばれるマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナル、リバプールが独占してきた。スペインはさらに極端で過去10シーズンのリーガ優勝はバルセロナとレアル・マドリードの2強が突出。唯一、現在チェルシーの監督を務めるラファエル・ベニテスがバレンシアを一度だけ優勝させているが、数年前からはバルサとレアルの2強を除いた18チームの順位争いを「オトラ・リーガ」(その他のリーグ)と呼ぶ言葉さえ生まれるほどの独占状態だ。

それに比べれば、Jリーグは驚きにあふれている。一昨年のJ2から昇格したばかりの柏の優勝。さらに昨年は絶対的に不利といわれた鳥栖の5位への躍進。極めつけはガンバ大阪がJ2に降格したことだろう。

思うような成績が出せなければ、監督やスタッフを刷新すればいいというのは過去の考えだろう。事実、昨シーズンのJ1で好成績を収めたチームの多くが「継続」を重視していた。初優勝を飾った広島は例外的に就任1年目の森保一監督の下でタイトルを獲得したが、これも浦和に移籍したペトロビッチ監督が継続したチーム作りを、コーチだった森保監督が受け継いだ結果だった。そして2位に終わったが、最後まで優勝争いを争った仙台も、手倉森誠監督が5年をかけて作り上げたチーム。横浜FMに至っては、開幕当初は低迷を続け第7節では17位まで順位を落とした。以前だったらこの時点で監督交代だっただろうが、結果的に樋口靖洋監督に指揮を継続させたことで、チームは立ち直り4位という成績を収めた。

一方で、それまで積み重ねてきたものをあっさりと断ち切ったクラブはどうだったのか。確かに経営者としてみれば、強豪と呼ばれるまでになったチームをさらに強くしたいという考えはあるだろう。ところがJリーグの場合、新監督が築かれたベースを受け継ぐことはほとんどない。新監督のもとで、再びゼロからチームが作られていくのだ。それが昨シーズンのガンバ大阪であり、一昨年の浦和の低迷だったのではないだろうか。

この季節になると、いつもサッカー専門誌などで順位予想をさせられる。かつては、それでもなんとなく体裁を保ててはいた。しかし、近年は常にシーズン終了時には恥ずかしい思いをしている。原因はかつて浦和に所属したエメルソンやワシントンのような絶対的な「助っ人」が存在しないことだろう。財源の問題もありこのレベルの選手を各クラブが獲得できなくなったことがある。さらに日本人のスター選手の海外流出もある。

しかし、それだけだろうか。個人的にはこの「混沌」の要因は、違うところにもあるように思える。各チームの中心選手以外の底上げがなされたのだ。かつては弱点となる選手が各チームにいたものだが、それがなくなった。決して派手ではないがチームの役割を確実にこなせる選手がそろっているからこそ、継続性のある監督の戦術がピッチに反映されるのではないだろうか。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている