首都圏を7年ぶりに覆った白銀の世界。北国出身者からいえば、これが果たして大雪と呼べるのかは疑問だが、間違いなく間が悪かった。14日の成人式に出席した晴れ着姿のお嬢さんたちが、足下をぬらしている姿を見て気の毒に思ったが、この日を心待ちにしてきた高校生サッカー選手たちに対しても同様の思いが募った。

ともに初優勝を目指す鵬翔(宮崎県)と京都橘(京都府)。高校選手権の頂点を目指して国立競技場に乗り込んだ若者たちの気勢も、思わぬ形でそがれることになった。しかし、この順延は正しい判断だった。いくら全天候型をうたっているサッカーとはいえ、さすがに積もった雪の上では競技にならない。観客の安全面も含めて早目に順延を決めたのは、テレビの放送予定を考えると、英断といえるだろう。

Jリーグが発足して、今年で21年目。Jクラブにはプロに直結する下部組織はあるものの、高校サッカーは間違いなくプロ選手の大きな供給源だった。そのなかで脚光を浴びる高校サッカーとは対照的に、一時はJクラブに多くの人材を奪われて競技レベルが低下していた大学サッカーが、ここのところ巻き返しを図っている。

プロのリーグを持つ国で、そもそも日本というのは選手育成の面で、かなり特殊な形態をとっている。サッカー先進国の選手の育成は、基本的にはプロクラブの育成組織で行われるものであり、学校の部活動で行われているのは韓国と、スポーツ産業化している米国ぐらいのものだ。さらに日本の場合、プロの契約年齢となる高校の上にも大学がある。ロンドン五輪で活躍した永井謙佑(福岡大―名古屋)やオーバーエイジ枠の徳永悠平(早大―FC東京)、インテル・ミラノで活躍するA代表の長友佑都(明大)など、世界の舞台で戦うプロ選手に大学出身者がいるというのは、欧州や南米から見ればかなり不思議なことらしい。

Jリーグが開幕したころは、選手育成や強化の役割を終えたと思われた大学サッカー。しかし、ここにきてJリーガーの数を見ると大学出身の選手は、予想以上に多いことに気づく。2010年のデータを見ると、J1では約28%、J2では約40%。リーグ全体で見ると約34%の選手が大学卒だ。

大学出身の選手のメリットは、まず体ができていることにある。高校を卒業したばかりの選手の場合、プロのスピードや当たりに慣れるにはある程度の時間が必要だが、大学出身の場合はフィジカル面での問題はない。即戦力として起用できるので、育成に資金をかける財力のないJ2に大学出身者が多いということだ。

さらに大学卒の選手のメリットを、あるクラブ関係者はこう語っている。「大学に入学すると3学年の先輩がいる。その選手が4年生になると3学年の後輩ができる。1学年が30人だとしても、同学年も含めて210人とのつながりができる。確かにユースから昇格してきた選手のほうが技術的に高い場合はあるけれど、社会性を持った大卒選手は技術面に加えてリーダーとしても期待できる。チームを組むということを考えると、核となる大卒の選手は外せない存在なんですよ」

クラブユース育ちの選手が、一概に社会性がないとはいえないが、少なくとも大学生はサッカー以外にも多くの人間に関わっているわけだから、協調性は身につけているというのだ。Jリーグ発足当初は、プロから勧誘されれば、すぐに飛びついた高校生たちだったが、ここにきて変化が表れているという。アドバイスする高校の指導者や親が慎重になってきているのだ。その大きな要因となっているのは09年にあるシステムが廃止されたことに関係している。

Jリーグ開幕時から出場機会の少ない若手選手に実戦の場を提供する目的で行われてきたサテライトリーグ。各クラブの財政負担を軽減するためとはいえ、このリーグ戦を廃止したことはJクラブに席を置く若手の成長を鈍化させた。高校を卒業してすぐプロで活躍できる鹿島の柴崎岳のような存在は、あくまでもまれ。「選手は実戦からしか学ばない」という欧州の言葉があるように、練習試合では身につける要素に限度があるのだ。そして昨年、U19日本代表がアジア予選の準々決勝で敗れ、ワールドカップの出場権を逃したのも、このこととまったく関係ないとは言い切れないだろう。

その意味で大学サッカーは、コーチや施設も含めた環境面ではプロには劣るかもしれないが、試合経験を積みやすい。さらにあまり知られてはいないが、全日本大学選抜のメンバーに選ばれれば、海外遠征やキャンプも数多く、その意味でJクラブの若手よりも国際経験が豊富なのだ。

2年に一度行われるユニバーシアード競技会では、1995年福岡大会の初優勝以来、実に9大会で5回の優勝を成し遂げている。確かにこの年代の優秀な選手は、他国ではプロとして活躍しているが、サッカー選手としての国際経験、さらに人間としての国際感覚を養うという意味では大学生フットボーラーを選択するのも悪くはないだろう。

プロとして活躍できる、本当に優れた選手。そのような存在は大学生活の4年を経ても、またプロからの勧誘を受けるはずだ。プロ野球と違い契約金があるわけでもないJリーガー。選手寿命が決して長くはないフットボーラーとしての人生を考えたとき、現役を終えた後もつぶしの利く大学卒Jリーガーは、これからも増えていきそうだ。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている