2013年のモトGPに、青山博一が復帰を果たす。2009年に250CCクラス(当時)で総合優勝を達成した青山は、翌年に最高峰へステップアップ。2011年までの2年間をホンダのサテライトチームで戦った。しかし、望むような成績を残すことができずに2012年はシートを喪失。SBK(スーパーバイク世界選手権)へ戦いの場を移した。この青山の転向により、2012年のモトGPは20年ぶりに日本人フル参戦選手不在の一年となった。

シーズン中盤以降、青山はモトGP復帰を目指して複数チームと交渉を進めてきたが、10月上旬にCRT(Claiming Rule Team/クレーミング・ルール・チーム)勢のアヴィンティア・ブルセンスと基本合意。11月には正式発表が行われ、最終戦バレンシアGPでは同チームの負傷選手の代役としてスポット参戦を果たした。

CRTとは2012年から始まった参戦形式で、これらのチームは量産車エンジンを改造してオリジナルフレームに搭載したマシンを使用する。モトGPでは各オートバイメーカーの製作するレース専用プロトタイプマシンで争われてきたが、このCRTという形式を採り入れることにより、レースへの参入障壁を引き下げようという狙いがある。2012年は7チーム9台のCRTマシンが参戦したが、マシンの戦闘力はレース専用設計のプロトタイプ勢よりも大きく劣るものだった。燃料の積載容量や年間に使用できるエンジン数など、ルール面で多くの有利な条件を与えられてはいるものの、量産車をベースにしているために、サーキット一周あたりのプロトタイプマシンとのタイム差は2~3秒、あるいはそれ以上の大きな開きがある。

CRTマシンを初体験した青山は、エンジンのパワー感やコーナーでの旋回性、立ち上がりでのトラクション、チャタリングなど、多くの点を改善課題として挙げた。

「(このチームでは)気持ちを切り替えて、バイクを仕上げていくことに楽しみを見いだしていきたい」と話すが、チームの意図としても、モトGPのプロトタイプやSBKマシンなど多くの車輌特性を知る青山から有意義なフィードバックを得て今後の開発と戦闘力向上に活かしたい、という狙いが大きいはずだ。また、チーフメカニックとして、2010年にホンダサテライトチームで青山と行動をともにしたトム・ヨイェッチが帯同することになったのも心強い材料だ。

とはいえ、現在のチーム力やマシンの戦闘力では、表彰台やトップグループ争いを期待するのは難しいだろう。2013年のモトGP参戦状況は、プロトタイプマシン勢がホンダ、ヤマハ、ドゥカティ各4台ずつの計12台。一方のCRT勢が12台になる予定だ。青山の現実的な目標は、まずこれらCRT勢でトップに立つこと。そして、プロトタイプマシンとの差を少しでも縮めてゆく、というものになるだろう。(モータージャーナリスト・西村章)