「1年前には想像もつかなかったカードが東京ドームで組まれた」とは、4日の新日本プロレス東京ドーム大会でIWGP王者の棚橋弘至が発した言葉。3年連続でドーム大会のメーンを闘った棚橋の対戦相手とはオカダ・カズチカ、25歳。

昨年のこの大会は第3試合にメキシコからの凱旋試合として出場しているが、まったく記憶にない。新日本プロレスには2007年8月から出場している。正直なところ、1年くらい前までは、この名前を聞いても誰のことか分からなかった。

彼こそは“プロレスの申し子"と言うべき選手かもしれない。中学時代は陸上部で、100メートル走で愛知県1位の記録保持者(タイムは忘れたとのこと)。あこがれのプロレスラーになるため16歳で闘龍門(メキシコ流スタイルのプロレス団体)に入門し、メキシコでデビューした。

メキシコのプロレスラー、あるいは闘龍門のレスラーといえば、小型の選手が多いが、オカダは身長191センチの大型選手。ならば「俊足なんて眉つばものだろう」と思っていたら、昨年8月に国立競技場で報道陣に快足を公開。50メートル走で5秒94をマークしたというから、虚構のプロフィールではなかった。

ヘビー級、そしてずば抜けた身体能力といえば、ジャイアント馬場の顔面にドロップキックをヒットできたジャンボ鶴田を思い出す。鶴田がデビューしたのが22歳。現在のオカダはそれよりやや年が上だが、将来性十分な逸材だ。

プロレスラーを目指す人間が柔道やレスリングで格闘技の基礎を身につけることは重要なことだと思う。プロレスと総合格闘技がボーダレスとなっていた時代には、総合の選手から見下されないためにも、それが必須と思っていた。

両者の区別が明確となった昨今は、スタートからプロレスという選手の方がファンの気持ちをつかめるのかもしれない。昨年のプロレス大賞受賞、そして今回の東京ドームでのメーン奪取というオカダの活躍が、そう感じさせてくれた。

もちろん、プロレスラーから発する「すごみ」、すなわち「強さ」の追求は忘れてほしくない。(格闘技ライター・樋口郁夫)