2013年シーズンに向けて、日本のファンにとっては残念な一報が届いた。日本GPで3位表彰台を獲得した小林可夢偉が、13年シート喪失を発表したのだ。可夢偉は、10年シーズンから3年間を戦ったザウバーとの契約延長がなくなり、他のトップチームへの移籍を模索、ファンからF1活動資金を募る『KAMUI SUPPORT』を設立するなど、あらゆる手段を講じて交渉を行ってきたが、シート獲得には至らなかった。

今回、可夢偉は『KAMUI SUPPORT』のなかで、最終的に800万ユーロ強(約8億8000万円)の資金を確保したと発表している。それでもシート獲得はならなかった事実に、ファンのなかには納得いかない人もいるだろう。

しかし、現在のF1チームは、トップチームで700名ほど、中堅チームでも400名ほどのスタッフが働く雇用と、2台のマシンを開発製造する設備を保有している。チームを維持するだけでも年間数十億円とも言われる莫大な費用が必要だ。それに対して、チームの収入源は成績や継続年数に応じた分配金とスポンサー広告だけ。パドックでは、自動車メーカーと一体のフェラーリと、F1活動が企業宣伝活動と一体のレッドブル以外に安定経営できるチームはないと断言する声もある。

例えば、2012年、名門ウィリアムズに8年ぶりの勝利をもたらした、ベネズエラ人ドライバーのパストール・マルドナド。彼はスポンサー資金でシートを獲得したと言われている。その金額は12年分だけで2940万ポンド(約40億円)。これはチーム側のスポンサー向け請求書が世に報道され判明した一例だ。だが、彼はペイドライバーと呼ばれても勝利し、速さもあることを実証した。

現在、ヨーロッパでは日本の“失われた20年"と同じような長期の不況に陥るという声がある。チームとすれば、ドライバーを速さで決めたいのは当然だが、それを許さないチーム運営という現実と向き合っている。可夢偉の速さやファンの熱意だけではどうにもならない高いハードルだ。

それでも、日本では政権交代により、景気浮上の期待感から株価は連日上昇中と、今後状況が好転する可能性はある。この先、本当に日本が復活していくとき、14年以降の可夢偉をサポートし、ともに世界トップ獲得を目指す企業が現れることを期待したい。(モータージャーナリスト・田口浩次)