2016年リオデジャネイロ五輪でラグビーが実施される。種目は日本で見慣れた15人制ではなく、スピードある展開が魅力の7人制が採用された。五輪に向けて注目が集まる中、女子の日本代表が貴重な国際強化の舞台となる7人制のワールドカップ(W杯)のアジア地区予選で3位となり、来年6月にロシアで開かれる本戦出場権を獲得した。サッカー女子の「なでしこジャパン」も五輪より以前に開催されたW杯でブレークしたこともあってか、メディアの関心も高まってきた。

驚いたのは帰国後の会見で中村知春主将が発した言葉だ。「W杯の目標は世界一。組織力を磨けば五輪金メダルも取れる」と言い、報道陣の反応ぶりを感じてか「声高に言いたい」と付け加えた。冷静に見るとアジアで3位。正直、現時点では世界上位にはまだまだ遠い。だが、ほかの選手も「金メダル」と迷いなく口にした。「優勝する」「金メダルを取る」という言葉はスポーツを取材していると珍しくはないが、これほどまでの“すがすがしさ"は、なかなかなかった。

背景の一つに「成長の余地」があった。今の代表メンバーを見れば、他競技からの転向組が目立つ。ラグビーを始めて8カ月という選手もいる。その分、太田治チームディレクターは「やればやるほど成長する」という。いわば乾いたスポンジだ。

これまでの強化合宿では戦術面より体力面に重点を置き、徹底的に走り込みを行った。砂浜でのランニングも含め、1日20キロ以上。浅見敬子ヘッドコーチが「練習を終えると死んだ魚のようだった」と表現したほどだ。その結果、3位決定戦では走り勝って後半に突き放した。選手たちが、「やれば強くなる」という手応えをつかんだのはとてつもなく大きい。日本は男子で築いた長い歴史と実績があり、アジアでは指導のノウハウで優位性を持つ。これでしっかり戦術を教え込めば…。中村主将も金メダル獲得の前提として「知識、組織力を磨けば」と挙げたように、スポンジにしっかりとした水を吸収させることができれば、想像以上の成長が得られるかもしれない。

もう一つは「全力を注げる」という点だった。男子と比べれば分かりやすい。男子は15人制のトップリーグが国内最高峰リーグとして君臨し、15人制の企業チームが選手を抱える。存在感の薄い7人制の日本代表は15人制のチームから選手を“借りて"構成する格好だ。だから、ややもすると7人制の日本代表側が「頭を下げる」(関係者)関係になってしまう。さらに、アジアを長らくリードする存在で、五輪に向けて強化を進める各国に追われる立場でもある。

女子はどうか。そもそも競技人口が少ないし、チーム数も少ない。15人制ではメンバーを集めるだけでも一苦労で、7人制の方が実戦強化しやすい。五輪採用をきっかけに7人制のチームが増えた側面があり、五輪という目標を持って転向を決意する選手も多い。チーム側にとっては五輪への期待は大きく、「7人制の代表になることのステータスは高い」(チーム関係者)と協力を惜しまない。だから日本代表合宿を頻繁に行うことができた。

アジアでナンバーワンと言われる中国を追う立場でもあり、まだ世界の勢力図もはっきりしないから、常に上を向いていけるのも好材料。女子ラグビー界の未熟さは課題だが、夢を追う選手が目標を身近に感じられる喜びが、「金メダル」発言に表れているのかもしれない。

渡辺匡(わたなべ・ただし)2002年共同通信入社。和歌山支局、大阪社会部などを経て11年から運動部。ラグビー、テニスなど担当。東京都出身。