個人的な意見を言わせてもらえば、引き受けてほしかった。野球の日本代表が3連覇を狙う来春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨む代表監督の就任要請を固辞したソフトバンクの秋山幸二監督のことだ。「現場は無理」という理由以外にも、受諾できない深い訳があったのかもしれない。だが、昨季チームを日本一に導いた実績などを考えても、指揮官として脂がのりきった秋山監督が最適任者だったと思う。

2006年の第1回は当時ソフトバンクを率いていた王貞治監督(現球団会長)、09年の第2回は巨人の原辰徳監督と、いずれも現役監督が日本代表を指揮した。米大リーガーも含めた一流選手を束ね、日の丸を背負って戦う重圧。ましてや大事なシーズンを前にチームを離れることは、相当な覚悟がいると思う。実際、前回大会後に原監督は「もう一度やってほしいと言われても、引き受けるかどうか。その時は熟考するだろうな」と話したという。

秋山監督は一貫して兼務は難しいと主張した。シーズン終盤、優勝の可能性がまだあった時期にペナントレース以外の騒動に巻き込まれたことに対するいら立ちも十分に理解できる。それでも、日本野球機構(NPB)関係者が「球界全体のことを考えて、受けてほしかった」と漏らした言葉が記者にも響いた。

秋山監督が断った結果、代表監督には元広島監督の山本浩二氏が就任することが決まった。本塁打王4度、打点王を3度獲得するなど現役時代の実績は輝かしく、広島監督としても1991年にチームをリーグ制覇に導いた。WBCでもしっかりと代表をまとめ上げるだろう。

ただ、05年を最後に現場から離れていることに不安は残る。何より、前回大会時点で50歳だった原監督から現在50歳の秋山監督にバトンが渡されるのではなく、65歳の山本氏に引き継がれることは時代に逆行しているのではと感じてしまう。

それにしても、日本プロ野球選手会の出場辞退騒動から監督選考の迷走と、WBCをめぐってはごたごた続きだった。ファンの野球界に向ける目は冷め切っているに違いない。

「隣の芝は青い」ではないが、去年まで取材していたサッカー界ではロンドン五輪での男女代表の活躍に加え、日本で開催されたU―20(20歳以下)女子ワールドカップ(W杯)で日本が3位に入るなど明るい話題が続いている。U―20女子W杯で日本が韓国を破ってベスト4入りを決めた試合の平均視聴率(関東地区)が17・6%だったのに対し、巨人が3年ぶりの優勝を決めた試合の平均視聴率は11・2%(同)。「野球界、大丈夫?」と思ってしまうのは記者だけだろうか。

山本 地平(やまもと・じへい)1973年生まれ。横浜市出身。2008年3月、他社の運動部記者から共同通信社に転身。大阪支社で遊軍をした後、09年5月から東京運動部でサッカー、12年1月からプロ野球を担当