大リーグ、レッドソックスの松坂大輔投手とプロゴルファーの石川遼選手は似ている。どこが? ゴルフのうまいところが、というのは冗談。ただし松坂投手の趣味はゴルフで、スコアは70台前半を誇る。テキサス遠征の際は、必ずといっていいほど契約スポーツメーカーのゴルフ用具工房で試打などに汗を流し、ドライバーショットは300ヤードを飛ばす。「野球をやめたらプロゴルファーを目指そうかな」と話す腕前なのは事実である。

真面目な話としては、記者会見での話し方が似ている。2人とも若くして全国的なヒーローとなり、圧倒的な注目にさらされた。だからだろうか、質問されたあと十中八、九「うーん…」とか「そうですね…」と考え込み、一拍間を置いてから慎重に言葉を選んで答える。自分の発言の重さ、そして誤解を招く怖さを知っているのだと思う。

次に、ともに発言が前向きである。結果が悪かった時でも「いや、気にしていないです。悪かった点は○○だけど、○○は良かった」と必ず収穫を挙げる。この辺りは、一流のアスリートに共通するポジティブシンキングなのかもしれない。

もう一つは、独特の考えがあり、そこに頑固なところ。松坂投手が以前「内角を投げて真ん中に行くのは最悪。でも、思い切り腕を振れば、内角を狙って外角に外れる。これは問題ない」と話したのには驚いたが、石川選手にも驚かされた。最近流行のメンタルトレーニングは眼中にないようで、春先には「自分の感情がどういう時に、どういうショットが出たかを考え、淡々と打つことを心がけている。それが自分流のメンタル強化」と話していた。これまた若いうちに成功した裏付けがあるからこそ、なのかもしれない。

正反対なところもある。それは技術論。松坂投手は投球フォームや、腕の角度などといった細かなテクニックの話を嫌う。報道陣に質問されると、たいていの場合「それは言えません」となる。「今、自分で気にしているチェックポイントが二つあるので」なんて切り出しても「具体的には?」と聞き返すと「秘密です」。今季は肘の手術からのリハビリ中、報道陣をシャットアウトした時期があった。担当を離れた気安さで、その理由を聞いたことがある。「今は自分の癖となる悪い動きがあるとすると、それと正反対の動きをわざと取り入れるようなことをする。でもそういうことをすると必ず記者さんに『あそこはなんで変えたの。新しいフォーム?』とか聞かれる。それがしんどい」と話していた。

一方、1月からゴルフ担当になり、初めて石川選手の取材に訪れた時だった。雑誌の依頼を受けた彼はプラスチックの棒のようなものを何本か用意してこう始めた。「これが、ボ

ールの飛ぶ方向、飛球線です。そしてこれが自分の肩のライン。これが右を向くといわゆるドローボールが出て…」。以後、15分ほどにわたり、ゴルフレッスンと自分が今どのような課題でスイングの調整をしているかを説明した。

これは選手の違いというより、客席に座って「見る」視点の多い野球に比べ、選手と同じようにボールの落下点を追い、自分ならどう打つかに思いを巡らせるゴルフファンの「する」視点が強いところにも原因がありそう。実際には試行錯誤を積み重ね、深く掘り下げた野球理論を持つ「松坂大輔のピッチャーズ・バイブル」も読んでみたい。いつか、発行される日は来るだろうか。

木村 壮太(きむら・そうた)1973年生まれ。横浜市出身。97年共同通信に入社後、相撲、プロ野球(オリックス、阪神、横浜)、モータースポーツなどを取材。2007年からボストン支局でレッドソックスを中心に大リーグを担当。2012年1月に帰国し、ゴルフ担当に。