1950年から続くグランプリの歴史で、最初のグランプリが行われた伝統のイギリスGPを今回制したのは、レッドブルのマーク・ウエバーだった。そしてイギリスGPの直後に発表されたのが、ウエバーの契約延長。すでに長期契約を結んでいるセバスチャン・フェテルと合わせ、レッドブルは来年のチーム体制を固めた。じつはこうした早め早めのチーム体制固めこそ、近年チャンピオンシップを制しているレッドブルの強さの要因となっている。

前に一度、天才デザイナーと呼ばれるエイドリアン・ニューウェイにインタビューし、新車開発のスケジュールを聞いた。

「シーズン開幕が3月、そこからライバルたちのマシンとの差を相対的に評価し、すでに先行して開発している新車開発チームと合流して、5月くらいには翌年のマシン開発を具体的にスタートさせる。デザインを描き、風洞実験やCFD(流体力学)のコンピュータを駆使してデータを取り、秋口にはマシンの方向性も見え、ドライバーにはシミュレーターを使ったデータ取りに協力してもらう。翌年の新車発表以降は、実車とデータで得た差などを確認して開幕に向けてさまざまな作業が進んでいく」と彼は大まかな流れを答えてくれた。

マシン開発時、チームは可能な限り一貫したデータを基軸に開発を進めるので、もしドライバーが2人ともシーズン後に変わるようなことがあると、新しいドライバーとの意見や印象の差で開発に滞りが起きる可能性がある。しかもマシン開発は数年先を見越して、毎年バージョンアップしていく方法が現在の主流。ドライバーが頻繁に変わる影響を嫌がり、マシン開発にほとんどドライバーの意見を取り入れないチームもある。

そう考えると、やはりチャンピオンを争うチームはどこも体制が安定している。フェラーリはアロンソの加入が決まったときから、彼を中心としたチーム作りをしてきたし、マクラーレンはバトンが契約3年目、ハミルトンに至っては6年目と長期契約を結んでいる。ただしハミルトンは契約延長を現在マクラーレンと交渉中で、その影響からか今季は伸び悩んでいる。

「チームがひとつの目標に向かって全力で進まなければトップは争えない。私は全てのスタッフが重要だと思っているよ」と断言したニューウェイ。レッドブルの体制固めの速さに、チャンピオンチームの本質を見た気がする。(モータージャーナリスト・田口浩次)