中大時代から鍛え上げた肉体は、さらにたくましさを増した。プロ2年目を迎えた巨人の沢村拓一投手は今まで以上に筋力トレーニングに励み、食事の量、回数も増やした。オフの間だけで、体重は6、7キロも増加。下半身の分厚さは、強靱な肉体が並ぶプロ野球選手の中でもひときわ目立つ。大きくした理由は「相手を制圧するため」。圧倒的な球威で打者をねじ伏せていく投球を目指している。

巨人担当1年目で、特に驚かされるのが沢村のストイックさだ。筋力トレーニング中はマウスピースをつけ、うめき声を上げながら重い負荷を上げていく。休養日をつくる選手も多くいるが、沢村はほぼ毎日、ウエート場に足を運ぶ。自らの肉体を深く知ろうと、500ページ以上はある解剖学の専門書を読破。読んだだけではなく、内容も頭の中に入っている。取材中、どこにどんな筋肉があるのか解説してくれる時もあるが、聞いている報道陣には分からない専門用語がつらつらと出てくる。自分の肉体を深く探求する沢村らしい言葉が聞かれたこともあった。

キャンプ中。大きくなった体になじまず、最初は投球フォームがばらばらだった。中盤を過ぎたころ、実戦でようやく納得がいく球を投げることができた。理想の動きに近づき、沢村は「筋肉が動きを獲得し始めている」とうれしそうだった。これまでスポーツ選手を何人も取材したが、初めて聞いた独特の言い回しだった。一つ一つの筋肉の動きに気を配っているからこそ、自然と口を突いて出た言葉だった。

5月20日のソフトバンク戦ではこんなこともあった。六回まで無安打に抑える完璧な投球だったが、七回2死一塁から連打を浴びて1失点。ここで降板した。実は六回の打席で、脚がつった。結果的に白星を挙げ、六回までの内容も悪くない。景気のいい言葉が聞かれると思い、報道陣は取材に向かったが、本人に笑顔は一切なかった。「もっと自分が思うようなボールが投げられるようにしたい。脚がつったのも情けない。もっと(トレーニングの)強度を上げないといけない。あしたから、がんがんと筋力トレーニングに励んでいきたい」と本気で悔しがった。その言葉を聞いて驚いたのが川口投手コーチだった。「やりすぎではないけど…。それ(筋力トレーニング)がプラスになると思って、それで生きてきた男だから、筋肉がないと不安じゃないの」と苦笑した。

ピッチャーはしなやかな動きも要求され、過度の筋力トレーニングはマイナスになるのではといった声もある。実際、ここまでの沢村も苦しんでいる印象を受ける。150キロ超えの直球を連発し、小気味いい投球で抑える時があれば、逆にあっさりと打たれてしまう試合も。調子の良し悪しがはっきりしている。体調不良もあり、5月下旬から4連敗を喫するなど、ここまで5勝7敗(7月3日現在)。

それでも、沢村は決して落ち込まない。「絶対、弱音は吐かない。しっかりと(今の状況を)受け止めることによって、成長していかないといけない。この悔しさを次につなげていけると信じている」。理想の投手へと近づくアプローチは絶対に変えない。かたくなにトレーニングに励む男がどんな投手になっていくのか、見ていたい。

浅山慶彦(あさやま・よしひこ)2004年共同通信入社。2年間の相撲、ゴルフ担当を経て、プロ野球に。阪神、ロッテと担当し、ことしから巨人担当。愛媛県出身