柔道好きの人と話していると、最近こんなぼやきをよく耳にする。

「重量級が強くないと、どうも盛り上がらないよね…」

柔道はもともと体重無差別で始まったため、柔道ファンや関係者には重量級への思い入れの強い人が多い。五輪でも何はなくとも金メダルを期待され、チームを引っ張る「日本代表の代表」みたいな立ち位置をずっと任されてきた。しかし、現在、100キロ、100キロ超級の重量級陣は、昨年の世界選手権で優勝を逃してから、国際大会で結果を出せない不振スパイラルにはまってしまっていて、ロンドン五輪の金メダル有力候補に挙げにくい状況にある。しかし、心配ご無用。今回は重量級以外の初出場の選手に、柔道の個性がはっきりしていて見どころの多い面々がそろっているのだ。そこでテレビ観戦のおともにこの3選手を紹介したい。

66キロ級の海老沼匡(パーク24)は汚い柔道が大嫌い。トリッキーな動きゼロで背負い投げや内股をかける真っ向勝負タイプ。立ち姿がすっとしていて美しいところもぜひ見てほしい。背筋がぴんと伸びていていると相手が技に入りにくいから、それが自然とディフェンスになる。

73キロ級の中矢力(ALSOK)は、迷いなき手順で寝技を遂行する手際のよい柔道が特徴だ。とくに両脚で三角形を作って相手を制御する三角絞めは魔法級。あっという間にきれいな三角を完成させるので、寝姿勢になっても視線を移さず、じっと観戦してほしい。右ヒジをケガしているため左組みにスイッチ、左背負い投げを繰り出す可能性もある。

90キロ級の西山将士(新日鉄)は組み手に工夫満載、技と技のコンビネーションがうまく、柔道についての発想がオリジナリティにあふれているのもまた魅力的。するっと一本を取って勝つような試合に興味はないらしく、「ラクをしない試合をしたい。泥仕合になったらそれが自分らしい」と考えている。

この3人は実績も十分だ。海老沼と中矢は昨年の世界チャンピオン、西山は今年1月、世界ランク上位の選手で争う世界マスターズ大会で世界選手権2連覇のイリアス・イリアディス(ギリシャ)を日本選手として初めて破り、優勝している。

ロンドンで柔道は1日1階級ずつ、体重の軽い階級から行われる。

彼らが順々に好成績を残していけば、自然とチーム全体に良い流れもできるだろう。そこでラスト2階級、100キロ級の穴井隆将(天理大職)、100キロ超級の上川大樹(京葉ガス)がその流れをしっかりキャッチ、試合内容につなげられれば…。冒頭のようなぼやきを蹴散らす結末だっておおいにあり得る。(スポーツライター・佐藤温夏)