今年のF1シーズン、第8戦のヨーロッパGPでは、8人目の勝者が生まれるのではないか? と大きな注目が集まった。結果は、フェラーリのフェルナンド・アロンソがシーズン2勝目を挙げて、その記録を止めたのだが、注目すべきは2位にキミ・ライコネン、3位に6年ぶりの表彰台を獲得したミヒャエル・シューマッハーが上がったことだろう。

この3人にはいくつかの共通点がある。まずはワールドチャンピオン経験者であること。次にフェラーリドライバー(フェルナンド・アロンソは現ドライバー)だったこと。さらに、ベネトン、ルノー、ロータスと時代によって名前は違うが、オックスフォード近郊にあるエンストンという小さな町にファクトリーを置くチームのドライバー(キミ・ライコネンは現ドライバー)であったこと。

このエンストンにファクトリーを置くチームは、トールマン、ベネトン、ルノー、そしてロータスと名前を変えてきたが、伝統的にチームとドライバーが、それぞれの力を最大限に引き出して勝利を獲得してきた。トールマン時代こそ、アイルトン・セナの2位表彰台が最高位だが、ベネトンではミヒャエル・シューマッハーが王座を獲得(1994年、1995年)、そしてルノー時代にフェルナンド・アロンソが王座を獲得(2005年、2006年)した。そしてロータスとなった現在、キミ・ライコネンが2位表彰台まで上がってきた。

チームの特徴を現ライバルチームで、元ルノーのエンジニアに聞いてみたところ、「エンストンのスタッフは最初からドライバーに百パーセント合わせたマシン作りをしない。まずは自分たちが考える最高のマシンを設計する。それにドライバーが乗り、さらにポテンシャルを引き出せるドライバーだったらドライバーと共に進化していく。まず最高のドライバーを用意し、マシンを合わせていく他チームとはアプローチが違うね」と教えてくれた。そのエンジニアがいま最も注目しているのがキミ・ライコネンだと言う。

「彼が速いことは誰もが知っている。僕が注目しているのは、チームリーダーとしてチームを成長させることができるかだ。もし、彼がロータスで勝利を挙げれば、ミヒャエルのメルセデスAMGと共に、ロータスは手強いライバルになるよ」

混戦の2012年シーズン、さらなる波乱が生まれるかはキミ・ライコネンにかかっている。(モータージャーナリスト・田口浩次)