第6戦イギリスGPが行われたシルバーストーンサーキットで、ある楽曲がお披露目された。昨年10月のマレーシアGP決勝レース中にアクシデントで命を落としたイタリア人選手マルコ・シモンチェッリのトリビュートソング「Rise Again(ライズ・アゲイン)」だ。この曲を作ったのは、マンチェスター出身のロックバンドThe Rainband(ザ・レインバンド)。

きっかけは昨年の12月だった、とボーカリストのマーティン・フィニガンは語る。2012年イギリスGPでライブを行う企画が浮上し、自身の兄や甥たちがシモンチェッリの大ファンだったこともあって、フィニガンは追悼曲を作って演奏しようと考えたのだという。

「当初は、ただ曲を作って演奏するだけの予定だったけど、企画がどんどんふくらんでゆき、イタリアへ行ってシモンチェッリ財団を運営する父君のパオロ氏や婚約者のケイトさんと会ったんだ。『スポーツ選手としてだけではなく、なによりもいち個人としてマルコのことを憶えていてほしい』と彼らは考えていた。だから、この曲のビデオも作って、(故人の故郷)コリアーノで収録することにしたんだ」

ちなみにシモンチェッリ財団は、体の不自由な人々の療養施設を世界各地に建設することを目的としており、今回のトリビュートソングの収益は全額がシモンチェッリ財団へ寄付される。

さらに、2008年と2009年にモトGPを戦ったイギリス人選手ジェームズ・トーズランドも、ピアノ演奏でゲスト“参戦"した。トーズランドは玄人はだしのキーボードプレーヤーとしても有名で、自らもグループを率いる実力の持ち主。フィニガンたちのバンドにも自然に溶け込み、ミドルテンポのリズムに乗せた粒立ちのよいギターのアルペジオと絡まり合って、独特のグルーヴ感と雰囲気を醸し出している。<何度倒れても、君はまた立ち上がる。まだ終わりじゃないんだ。痛みはいつか、消えてなくなる>という内容の、生前のシモンチェッリを彷彿させる歌詞とも相まって、メッセージ色の強い骨太な佳曲に仕上がった。

バンドは金曜と土曜の2日間、モトGP全クラスの練習走行や予選が終了した夕刻から、サーキット内の特設ステージでライブを行った。決勝日の17日以降は、iTunesでの楽曲ダウンロードも可能になった。コリアーノで収録したミュージックビデオは、YouTubeで視聴が可能だ。

ところで、シモンチェリの地元、イタリア・ミザノサーキットでは、今回のイギリスGPの1週間前にSBK(スーパーバイク世界選手権)第7戦が行われ、名称を「ミザノ国際サーキット マルコ・シモンチェッリ」に改称する、と発表した。9月にはこのミザノサーキットでモトGP第13戦が行われるが、その際にも、ザ・レインバンドは「ライズ・アゲイン」などのライブ演奏を行う。シモンチェッリ仕様の塗装を施し、全モトGPライダーのサインが入ったスペシャルギターも、そこでオークションにかけられる予定だ。(モータージャーナリスト・西村章)