遂に2012年度版の「イタリア・ボクシング年鑑」がリリースされた。同国のボクシング協会「FPI」と協力しながら、貴重な資料の編纂作業を行ったのは今年もピエトロ・アンセルミ氏、フラビオ・デッラモーレ氏、そしてデメトリオ・ロマノ氏の気鋭の記者3名。プロのみならず、協会からライセンスを交付されているアマチュアボクサーの全戦績までも網羅しているところが、伝統的にアマ強国であるイタリアらしい。

今年度版の「イタリア年鑑」で目立った新しい動きは、昨年度版の年鑑ではフォローしきれなかった、アマの国際ボクシング協会(AIBA)の賞金マッチ、「WSB(ワールドシリーズ・オブ・ボクシング)」の第1シーズンの全貌である。サッカーにヒントを得た(?)、日本では情報の限られているこの世界各国の都市名を冠したボクシング・チームの対抗戦は、2010年11月に始まり、欧州、アジア、北米の各地域内での対抗戦上位4チームが準決勝を行い、これを勝ち抜いた上位2チームが昨年5月に中国・貴州省で決勝を戦って、フランスの「パリス・ユナイテッド」が優勝している。

今年度の年鑑にはさすがに収録できなかったけれども、全12チームを6チームによる2リーグ制にして昨年11月から開始された第2シーズンでは、まさにイタリアの「ミラン・サンダー」が、さる5月2日にロンドン開催の決勝戦で、ロシアの「ディナモ・モスクワ」を破って優勝したばかり。もちろん「年鑑」では、これに先立って「ミラン・サンダー」のメンバーの戦績を詳細に紹介していた。イタリアにおけるWSBへの関心が高いのも無理はない、なぜなら現在の同国で、おそらくは最も大衆に愛されている91キロ超級の人気ボクサーのクレメンテ・ルッソ、北京五輪銀メダリストにしてアマ世界王者の彼の活躍の場がプロのリングではなくWSBであるからだ。

しかし、同年鑑の素晴らしいのは、実用的な最新の情報をしっかり押さえながら、毎年恒例の読み物の「階級別イタリア・ボクシング史」で、歴史を再検証した上で偉大な先達たちの記憶をかなり詳細に伝えているところだ。今年度は、「スーパーフェザー級史」と「スーパーライト級史」。一読すればわかるはず、年鑑とは実用的側面はもとより、経年数に連れて重要度が高まる不思議な生き物なのだ。(草野克己)